表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/114

99話 vs魔蟲ですわよ②

「『応急手当』」


 ルカさんとわたくしの火傷を負った部分に手を当てて癒す。目の前に構える【魔蟲】はそれを厭わなかった。むしろやれるものならやってみろと言わんばかりの自信を感じる。


「ありがとうございます、アリスさん」


「礼には及びませんわ」


 さて……どうしたものかしらね。近づけば膿みの爆発や膿みの腕に呑まれる。魔法を撃てば吸収される。結構ピンチですわね。地上から応援を呼ぼうとしても今【イリス】は【魔蟲】の生み出した魔獣の対処で混乱している。そこから主力を引き抜くわけにもいかないし、ここは空。戦える人材は限られてくる。


「……大ピンチじゃない」


『アリスちゃんピンチ〜? あっさりと認めるなんて珍しいね〜!』


 ミミちゃんが茶々を入れてくる。いや……もしかしたらミミちゃんの能力でこの状況をなんとかできるかもしれないわ!


「ミミちゃん、何かないの?」


「ないよ〜☆」


 ……期待したわたくしが馬鹿でしたわ。こう言ってはなんだけどミミちゃんってあまり役に立っていないわよね……。


「さぁ〜て、そろそろお別れとしましょうかねぇ♡」


 もし人の顔が付いていたならニヤリと笑っていたであろう【魔蟲】がわたくし達との戦いの終わりを宣言する。


「そう簡単にやられるわたくし達ではないわよ?」


「うっふん♡ いつまで強がっていられるかしらねぇ。『クリーチャーバレット!』」


 膿みの爆発! ルカさんだけに任せっきりにさせるわけにはいきませんわ!


「『ライトニング!』」


 膿みの爆発に対し雷の魔法で応戦する。相殺できた……というより相殺にしか持っていけなかったというべきかしら?

 さて……このままだとジリ貧もいいところだわ。何か逆転の手立てを考えてないと。……1つ賭けに出るしかなさそうね。多少のリスクを背負わないとこの化け物は倒せそうにないわ。


「うふふ……楽しませてくれるじゃない。でもこれはどうかしら? 『クリーチャーマシンガン』」


「なっ!」


 ルカさんが驚愕の声をあげるほど、先ほどまでの魔法とは格が違う魔法が飛んできた。

 マシンガン……確かに弾数が桁違いですわね。


「ルカさん!」


「はい。『アイスシールド』」


 おそらく氷の盾では防ぎきれないはず。ならば……!


「『ダークネスシールド』」


 単純に盾を増やしていきましょう。

 ……この弾幕で【魔蟲】の姿は確認できなくなった。ということはおそらく向こうからもこちらの姿は確認できていないはず。なら……


「『バニッシュ!』」


 透明化の魔法、久しぶりに発動ですわ!膿みの爆発をくぐり抜けて【魔蟲】の目の前に立つ。それでも気がつかれていないようね。なら後ろに回り込むわよ!


「さぁ〜て死んだかしら? ……あら?」


【魔蟲】も異変に気がついたようね。早く回り込まないと!


「あの黄色い小娘はどこに行ったのよ。まさか今ので死んだのかしら?」


「さぁ? どうでしょうね」


 ルカさんがわたくしの存在を煙に巻く。あと少し……あと少しよ!


「……まぁいいわ。あんな小さな人間1人どこにいたって変わりやしないからねぇ♡」


【魔蟲】が大口を叩いている間にようやく後ろに回り込むことができた。近くで見るとよりグロテスクな見た目ね。混沌とした紫色の膿が吐き気を誘ってくるわ。でも我慢我慢。ここは一撃喰らわせるわよ!

 剣に雷を纏わせる。さぁ、喰らいなさい!


「そうだと良かったわね。『雷剣:一刀飛斬!』」


 雷の斬撃が【魔蟲】の背部を一刀両断する。何かが潰れたようなグチョッという気持ちの悪い音が鳴り響きながら【魔蟲】の体が蠢いた。


「うぎゃぁぁぁあ! な、何よ!?」


 流石の巨体ね。一撃じゃ倒しきれなかったか。でも……


「『バニッシュ!』」


 もう一度姿を隠す。反撃を受ける前にさらに高く飛んで見てみると傷口が膿によって繋がっていた。一撃で倒さないといけないみたいね。となると……『絢爛の炎』しかないわよね。でもあれを吸収されたら完全におしまい。最悪【魔蟲】の力と相まって世界が壊れてしまうかもしれませんわ。


 ……となると、やってみるしかなさそうね。『絢爛の炎』と漆黒の大剣の合わせ技を試す時。『ライトニング』でできたのだから『絢爛の炎』でもできるかもしれない。その一縷の望みに賭けるとしましょう。


「『絢爛の炎』」


 漆黒の大剣に『絢爛の炎』を流し込む。最初は順調に進んでいったけど途中である変化が起こった。


『あちゃー、剣が歪んできちゃったね〜』


 ミミちゃんの言う通り、『絢爛の炎』のエネルギーに耐えきれずに剣が曲がったり折れそうになったりしてきた。これはまずいわね。


 でもここで止めることはできない。何とか耐えてもらうしかないわ!


「ん〜? 何よこの感じ……」


 まずい……あまりのエネルギー量に【魔蟲】が勘付き始めたわ。もう迷っている暇なんかなさそうね。


「はぁあ!」


 全力で『絢爛の炎』を大剣に流し込む。ミシッという音やバキッという音が剣から聞こえてくる。


 多くの不安を抱えたままだけどなんとか完成した。わたくしの『絢爛の炎』を纏った大剣ですわ!


「そこね! 『クリーチャーバレット』」


 あら、バレたようね。ならその弾丸もろとも吹き飛ばしてやるわ!


「『絢爛の炎:斬』」


 たったの一振り。それだけで目の前が一気に紅く染まった。燃え盛る業火は一瞬で消え、そこに【魔蟲】の姿はない。

 はぁ……今回も『絢爛の炎』任せになったけれど……なんとか勝てたわね。

 長らく活躍してくれた漆黒の大剣は『絢爛の炎』の魔力に耐えきれず折れてしまった。今までありがとう。何だかんだで助かったわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ