お題 猫 コンビニ 恋 1
本日から開始します。ほとんど記録目的で載せてますが、奇特な方がいらっしゃいましたら何卒宜しくお願いします。
お題 猫 コンビニ 恋
いつもの帰り道、少し遠回りをして帰ろうと思った。
なんでもない学校生活のはずだったのに、先輩を好きになってしまい、まして、先輩に振られてしまった。
なんでもない日常が、なんでもなくない日常になってしまった。
これならば恋などしなければ、いやせめて告白などしなければよかったと後悔すらしている。明日から部活で顔を合わせるのすら気まずくなってしまった。
なんで告白なんてしてしまったのだろう。唆してきた友達を恨みさえする。
家にすぐ帰って布団にくるまって枕を濡らして逃避してしまうことも考えたけど、どうしてもそんな気持ちになれなかった。自分の気持ちが整理できず、当てのない夕暮れの散歩と相成った。
オレンジの空が黒く染まり、涙でやたら豪勢に星がにじんで見えるころ、視界の端にふと猫が見えた。
別に猫好きでも何でもない私だけど、目をうばわれてしまった。きれいなヒスイ色した目を持つすらっと白い猫だった。
「先輩に似ている」
そう思ってしまった。
先輩の後をついて回って振られた私は、今度はまるで猫のストーカーとなった。
不思議なことに猫は警戒があまりないのか、何度もこちらを振り返りながらまるで案内するかのように夜道を歩いていく。
細い路地を抜けた先に、ふっと明るさが目にさしてきた。
二十四時間経営のコンビニがそこにあった。
「なんか甘い物でも買って帰ろうか」
そんな気持ちになったのは、もしかしたら先輩を落とそうと制限してきた日々にあるのだろう。吸い込まれるように、猫とともにコンビニに入った。
普段自分の家の近くにないコンビニには見慣れないスイーツが多かった。
小さい頃、無性に好きだったプリンを買うことにした。上がカリカリに焼かれている焼きプリン。あえてカラメルのとろみを捨てた大人の苦み。
気が付けば猫はどこにも居なかった。
「二百八十円となります」
そんな声にハッとしてレジの人の顔を見つめた。きれいなヒスイ色の瞳をした人だった。
きれいな十円玉が二枚掌に落ちるとき、私の心も落ちる音がした。