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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第87話

  そして、とうとう、その日がやってきた。3日前から沢木と他の秘書達も連日交代で会場のセッティングを手伝っていた。表向きのパーティではないため会社関係者はあくまでも裏方に徹しており、彼らは全てオブザーバーとして参加していた。クリスマスパーティということで会場はイルミネーションで盛大に装飾され、それに見合った客が時間の進行とともに続々と集まってきた。主人である秀一も10時頃には会場入りし、榊原からプログラムの進行について説明を受けていた。沙織は早苗達の手によって完璧に着飾られ、まるで結婚式に向かう花嫁のようになっていた。


  除々に慌しくなってきた会場に、ひとつ、足りないものがあった。それに気づいたのは沢木である。彼は誰にも気づかれることなく修一の傍に近づき、何かを耳打ちした。すると秀一の顔が少し曇り、何事か小声で指示を出した。沢木はかすかに頷き、またスッとその場を離れた。そして榊原を見つけると再び何かを耳打ちした。榊原の反応は秀一よりわかりやすく、数人の使用人たちが手を止め2人を見た。彼らを無視し、2人は裏側の通路に出るとどこかに急いで電話をかけた。時計を見ると間もなく6時になろうとしている。20回ほど呼び出し音を聞くとようやく相手がでた。

  「なんだ!オレは今忙しいんだ!電話なんかかけるな!」

「匠さん。何やってるんですか!早く来て下さい!」

怒鳴る匠に一歩も怯まず、榊原も大きな声を出した。

「忙しいと言ってるだろ!だいたい何だ、今頃!」

「今頃ってこっちのセリフですよッ!今どこにいるんですか!」

12月だというのに榊原の額には汗が滲んでいる。

「ち、ちょっと今、取り込んでる、っつ! 」

そこで匠の声が途切れ、少し間があって若い女性の声がした。

「あたし、剣道部のマネージャーで山本っていいます。今、周防君、病院にいるンです。周防君ケガしちゃって。治療してもらってるとこなンです。すいません!」

匠がケガ?榊原の顔にどっと汗が噴き出した。

「ケガ?ケガってどういうことです! どこの病院にいるんですか!」

携帯を持つ手にぐっと力が入る。ケガという言葉に沢木が身を乗り出した。

「えっと、えっと、あ、緑ヶ丘病院です。 あ、はい。あ、すみません。今、先生に呼ばれたンで。」

山本と名乗った女性徒はそこで一方的に電話を切った。榊原は何がどうなっているのかわからないままとにかく秀一に知らせなければと、沢木と共に急ぎ足で会場に戻った。

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