表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
80/132

第80話

  2人きりになると急に沙織はソワソワしだした。時計を見ると既に11半を回っている。匠はソファに深く腰掛けたまま微動だにしない。それが余計に彼女を落ち着かなくさせているのだ。ベッドから降りてみたり、ドレッサーの前に座って必要以上に髪をとかしてみたり。まだ紫色に腫れている顔半分に触れ、あの時の恐ろしさを思い出すと涙が勝手に零れ落ちた。

その時、彼女の周囲の空気が動き、身体が宙に浮いたかと思った瞬間、ベッドに投げ出された。

「キャッ!!」

声を上げた彼女の目に映ったものは、ひどく歪んだ匠の顔だった。

「静かにしろ!榊原がいなくなった途端、蜂のように動き回りやがって。少しは気を遣え!オレは明日早いんだ。おまえのフラフラに付き合っていられるほど暇じゃない!」

一方的に怒鳴るとジロリと睨み、今度は長ソファに沙織に背を向けゴロリと横になった。いつものことながら沙織はこういう時、匠にとっての自分は何なのだろうと思う。異性として見ていないのではないか。まして、恋愛の対象などもっての外なのではないか。何度も自問してきたが、未だにはっきりとした回答は得られていないのだ。匠に気づかれないよう、小さなため息をつくと、朝早い、と言った匠の言葉を思い出し、それに間に合うよう起きなければと、改めて横になった。

  翌朝。普段通りの朝食がたくみの空腹感をそそった。ご飯に味噌汁、焼き魚、海苔の佃煮、青菜のお浸し、野菜サラダとデザートの梨。味はプロに到底及ばないが、沙織の料理は安心して食する事ができる。ごはんを3杯もおかわりし、着替えのために一旦周防家に戻った。

7時、という時間帯は周防家にとって活動を始めるには早いのである。そのせいか両親共まだ起床しておらず、匠は落ち着いてシャワーを使い、支度することができた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ