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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第52話

  「あの男に見覚えはありますか?」慎重に運転しながら沢木が口を開いた。

「おそらく、森河だろう。駒木自ら来ることはないだろうし、城崎は頭脳派だ。」

「どこへ行くんでしょう。」

「さぁな。まっすぐ隠れ家に行くようなら初めから奴らの計画は失敗だ。クッションを置くなら・・・まぁ・・見込みはあるかもしれない。・・・しかし・・」

「匠さんが相手ではどんな悪巧みも徒労、ですね。」

「そうだな。・・フン。バカな奴らだ。」

とあるビルに入って行く男を見送って匠が呟いた。

「あのビルは?」

「駒木が事務所として最初に借りた所だ。所有者は商南物産。社長が駒木の縁者、と聞いたことがある。いずれにしても得宗グループの足元にも及ばん会社だ。」

「どうします?張り込みますか?」

「このままアクティに向かえ。日下が気になる。」

「はい。わかりました。」

2人の乗った軽自動車は商南物産ビルを通り過ぎ、一路、アクティに向かった。


  たくさんのフラッシュを浴び、落ち着いたはずの日下の緊張が舞い戻った。とにかく正規版DUEL 1の発表をしなくてはならないと、懸命に力を振り絞り、記者団の前で口上を述べた。いくつかの簡単な質疑応答をしている最中、従業員に案内された匠が入ってきた。堂々としたその姿に、日下の目頭がジーンと熱くなる。新たな人物の登場に、記者たちの目がその若い男に向けられた。

  匠は日下の隣に用意された椅子に悠々と腰を下ろした。DUEL 1の関係者らしいと気づいた記者たちはすぐ匠に質問をぶつけた。

「あなたはいったいどういう方ですか?」

「遅れて申し訳ありませんでした。私はアニメゲイト取締役。周防匠と申します。今日はお忙しい中、このように多くの方々に集まっていただき感謝いたします。」

匠は大きな身体を折り曲げ、丁寧に頭を下げた。

「取締役が会見に遅刻ですか?」

辛辣な言葉だ。しかし匠は表情を変えない。

「所用で少し遅れました。申し訳ありません。」

「所用って何ですか。この会見以上に大切なことだったんですか。」

執拗に食い下がるレポーターに匠はややうんざりした様子で、

「申し訳ありません。そのことについてはのちほど説明いたします。この場はDUEL 1についての応答に限らせていただきます。」

ジロリと睨まれ、そのレポーターは他のレポーター達に後方に追いやられた。

「改めてアニメゲイトが総力を挙げ結集いたしました体感ゲーム、DUEL 1を明日、午後6時より発売いたします。」

いつの間に明日発売になったのかと、日下は驚いて匠を見た。ところが匠の表情には自信に溢れ、不安のかけらさえ感じられない。両手で現物を掲げたサマは、さながら王侯貴族のように神々しい。日下は吹き出す汗を拭いながら報道陣の集中攻撃に耐えることになった。

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