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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第51話

  時間が迫るにつれ、日下は泣きたくなっていた。トイレに行く回数は数知れず。ホテルの従業員が心配し、医者を呼びましょうか。と言ったほどだった。そんな時、沢木から電話がかかってきた。ところがあまりの緊張に声が出ない。

「日下君、大丈夫か?」

匠の言っていた、日下の方が心配だ。というのはこれのことだったのかと納得した。

「あああ。しゃしゃわきしゃん・・わわたひは・・ぼう・・ダミ・・れ・・す。」

日下の声は震え、ガチガチと歯の鳴る音まで聞こえる。

「何を言ってるんだ!匠さんはきみを信じてこの役を任せたんだぞ!年下の匠さんが頑張っているんだ。きみがシャキッとしないでどうする!しっかりしろ!いいか、きみは1人じゃない。姿はなくとも私達がついていることを忘れるな。安心して会見してくれ。主役はDUEL 1であってきみじゃない。深呼吸をして・・・そうそう・・・そうだ。 やればできるじゃないか。・・よし! その調子だ。・・オ?匠さんが戻って来た。・・・電話代わろうか? いい?  いいのか。代わらなくても・・そうか、じゃ、成功を祈るよ。」

沢木の優しさが心に染みた。そうだ。オレにはアニメゲイトの社運がかかっている。こんなプレッシャーに負けている場合じゃないんだ!日下は自分に言い聞かせ、全身を奮い立たせた。しかし彼は沢木がついたウソを見破るにはあまりにも世慣れていなかった。沢木は日下を元気付けるため、戻っていない匠を登場させたのだ。その効果は抜群だったようだ。日下は上着の襟に乱れがないかどうか確かめた。


  12時の時報が鳴った。平日だが朱雀公園は子供を連れた母親が数人いた。それでもすべり台周辺は小さい子供が気軽に遊べる器具が少ないのかひと気はない。5分前に匠は紙袋をすべり台のてっぺんに置いた。何気ないふうを装い、そこから離れ一旦公園の外へ出た。その後、すべり台が見える位置に移動し物陰に隠れた。

  まるで時報が合図だとでもいうように、サングラスをかけた1人の男がどこからともなく現れた。はじめ、人待ちしているように遠巻きに公園をブラブラしていたが、誰もあたりにいないのを認めると、すべり台に向かって脱兎の如く駆け出した。男はまっしぐらにすべり台のてっぺんに登ると紙袋をわしづかみにしそのままジャンプ。着地したかと思うとよろけながら走り去った。それを確認すると匠は日下に電話をかけた。あらかじめ自分からの電話を待つよう日下には言い含めておいた。

「日下か。奴らは予定通りやって来た。手筈通りやってくれ。すぐ始めるんだ。」

電話を切ると今度は沢木の待つ車へ急いで戻り、記憶した男の跡を付けるよう命じた。沢木も慌てて出てくる男の身なりをしっかり眼に焼き付けていたらしく、すぐさまハンドルを切った。

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