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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第50話

  匠が沢木からその結果を聞いたのは朱雀公園の駐車場で指定された時間になるまで待機していた時だった。顔には出さないが匠は心底ホッとした。何より沙織が無事だったということが嬉しかった。残るは自分達と日下だけだ。匠は深く息を吸った。

「良かったですね。」沢木もホッとしたようだ。」

「ああ。沙織に何かあったら、オレはあの人に対して合わせる顔がない。」

沢木の瞳がチラッと動いた。(それだけですか。あなたはお嬢さんを心底愛しているのではありませんか?)言葉が喉まで出かかったのだが、これから始まる大捕物を前に匠の心を乱してはならないと、沢木は敢えてそれらを飲み込んだ。それは全てが終わってから聞くことにしよう。

「そうですね。さぁ、そろそろ時間です。 それは私が持ってましょうか?」

主の安全が第一と考えた沢木の申し出に、匠は首を振ると無言のまま車を降りた。

「1人で大丈夫ですか。相手は武器を持っているかもしれないですよ。」

「心配するな。その時はその時さ。むしろオレは日下の方が心配だ。じゃ、行って来る。」

茶封筒にディスクを入れ歩いて行く様は、サラリーマンが仕事でちょっと外出、という印象を与えた。本当に大丈夫だろうか。沢木は匠のうしろ姿を目で追いながら日下に電話をかけた。


  ビジネスホテル、“アクティ”の大宴会場は新聞記者、TV関係者でごった返し、いつになく騒然としていた。それというのも突然、各社、各テレビ局に得宗寺秀一の名で重大発表がある、と極秘にFAXが届いたからだ。得宗グループ会長自らの名を出す、ということは余程のこと!と各上層部は判断し、すぐ記者やレポーターを差し向けた。もちろんそれは秀一が承認したものではなく、独断で匠が指示したことではあるが、報道陣にしてみれば得宗寺秀一の名前が重要なのだ。しかも12時になるまでは報道はもちろんのこと、こういった会見があることすら一切流してはならない。と厳戒令まで出たほどだ。彼らが色めき立ったのも無理はない。

  その中で日下洋は極度に緊張していた。ハンカチを何度ももみくちゃにし、ひっきりなしにボタボタ流れる汗を拭っている。こんなとき匠がいてくれたら!と彼は何度も思った。チラッと報道陣をカーテンのすき間から盗み見るたびにその数が増えている。いくら断れない状況にあったといっても、こんなことになるのなら土下座してでも拒否すれば良かった。日下の後悔は例に漏れず先に立ってくれなかった。


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