表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
49/132

第49話

  第3埠頭、商南倉庫付近をじわりじわりと取り囲み、真田以下、十数名の警官隊が今か今かと突撃の号令を待っていた。第一斑が現場に到着したのが8時40分。彼らは知らなかったがあと少し遅ければ黒猫のジョージは沙織を連れ出すところであった。もっとも、沙織は薬できっちり眠っていたし、ジョージも前日からの疲労のせいかぐっすり寝込んでしまい、駒木からの電話音で目を覚ましたのが11時。というお粗末だった。

  第二班が到着し、建物周辺は次第に緊迫した空気に包まれていった。ひっそりとひと気のなさそうな倉庫を囲み、じりじりと時間の流れを待つ隊員達。


  外が物々しい光景になっているとは露知らず、ジョージは着信音でビクッと目が覚めた。

「は、はい?」

『何をやってるんだ!早く来い!』

森河の怒鳴り声が耳にガンガン響く。

「す、すみませんッ!すぐ行きますッ!」

慌てて時計を見ると既に約束の(といってもジョージには連絡があるまで待機。という指示が出ていたためそれほどの問題ではない。)時間を2時間も過ぎているではないか。これは大変!とばかりに、まだ薬が効いてぐっすり寝入っている沙織を揺り動かした。

「おい!起きろ、おい!」

何度揺すっても起きない沙織に、駒木からの命令も忘れ、ジョージは平手でその頬をぶった。乾いていた血の跡のそばを新しい血が流れた。ゴフゴフ!苦しさにようやく沙織の意識が戻った。

「足のロープは外してやる。これからある所へ移動しなきゃならないからな。」

「いどう?  どこへ、行くの?」

「もうすぐあんたともお別れだ。短いつきあいだったが別れるとなると情が湧くってもんだ。・・どうだ、オレのコレになんねぇか。いい夢見さしてやるぜ。」そう言って薄笑いを浮かべ小指を立てて見せた。

「・・・いいわ、なってあげる。 その代わり、得宗寺家を本気で背負っていく心構えがあるならね。どう?」

得宗寺家。その名前を知る者にとっては三つ葉葵の印籠を出されたと同じ効果があるのだ。大概の人間はそれだけでしり込みしてしまう。黒猫も例外ではないらしい。突然キョロキョロとあたりを見回し、口数さえ少なくなり、とにかく早くここから出たいという素振りを見せ始めた。

「は、早くしろ!」

効果てきめん。沙織はゆっくりと立ち上がった。少しめまいを感じたが、ここで弱みを見せてなるものか。ぐっと足に力を込めた。

「行きましょう。」

弱腰になったジョージを引っ立て、ドアを開けさせ外に出た。・・・一斉にパパパとフラッシュの光を浴び、一瞬、2人は目が眩んだ。そこを複数の人間が取り囲み、あっという間に1人は捕えられ、1人は保護された。ものの5分とかからないあっけない幕切れだった。すぐ真田は本庁に連絡し、本庁から沢木へ被害者無事保護。の連絡が入った。11時36分のことである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ