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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第47話

  応対に出たのは幸いにも沢木も面識のある真田という刑事だった。事の仔細を話すと、それ!大事件!とばかりにすぐ対策本部が設置された。相手が得宗寺家というのもだいぶ影響していたかもしれない。人質である沙織の身柄の安全を考慮し、捜査は極秘裏に進められた。とはいっても、すでにどこに囚われているのか判明しているので、彼女の救出と犯人の逮捕のため直行できる限りの人数を揃え、1班と2班に別れ現場に向かった。

警察との折衝はプロである秘書の沢木に任せ、匠は電話で日下を呼び出した。彼は駒木が借りている事務所近くの物陰に隠れ、刑事よろしく見張りなどしていた。匠からの呼び出しに、何かあったんですか!とすぐ指定されたカフェにやって来た。

  「何かあったんですか?」日下は息せき切って匠の前に座ると同時に言った。

「そういうわけではないが、1つやってもらいたいことがあってね。」

匠は日下のためにコーヒーを注文すると、手タレのような美しく長い指で自分のコーヒーを飲み干した。そして長い足を邪魔そうに組み直し、グイと身を乗り出した。

「実は・・今回の件を警察に届け出たんだ。」

いとも簡単に言う匠に日下は思わず目をむいた。

「そそんなことしたら、お嬢さんは!」

「居所はわかっているから救出はプロに任せた方がいいんだ。それよりもやってもらいたいことなんだが・・・12時きっかりにDUEL 1の新作発表をしてもらいたいんだ。メディアを使ってね。駒木たちが他社に売りつける前に先手を打つ。あいつらはDUEL 1が完成したことは知らないはずだ。それを利用する。沢木にもそれは言ってある。早すぎては失敗する恐れがあるから、だいたい11時半を目安に警察は行動を起こす計画だ。  できるか?」

できるか。とじっと見つめられ、日下は年下の匠に気圧されそうになった。ただでさえモデルのようなスタイルに“超”がいくつ付くかわからない程の美しい顔に見つめられているのだ。できない。などと思っていても口にできないだろう。

「は、はい。やってみます。」額に吹き出す汗を手の甲で拭いながらそれだけ言うのが精一杯だ。

「頼む。DUEL 1の運命は君の肩にかかっている。頼むよ。」

頼む、と言われ、日下の心は弾んだ。これまで社長という肩書きのせいで、自分の身体を動かして何かをする、ということが殆どなかった。そのせいか、常日頃何か物足りなさを感じていたのだ。だから頼まれもしないのに、勝手に気を利かし駒木の事務所の見張りなどしてみたのである。やっと本来の仕事ができる!そう思うと運ばれてきたコーヒーに手もつけずカフェを飛び出した。匠は仕方がないな、と言わんばかりにそのカップを手に取った。

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