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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第43話

  外に出てみると白々と空は明けていて秋風がひんやりと顔を撫でた。匠はその風を顔にたっぷりすりつけるように手で擦った。すると足の先から力が湧き上がってきた。

「よし!」

ひと声かけると更に力が加わった。紙袋にディスクが入っているのを確認すると一旦、得宗寺家へ足を向けた。沢木達から未だ連絡がなかったし、指定された時間にはまだかなり余裕があった。秀一に経過報告もしなければならない。

  交差点を渡ろうとした時、スッと脇に車が止まった。見慣れぬ軽自動車に匠は訝しげな表情をした。もしや犯人?

左側の窓を開き、顔を出したのは沢木だった。何も言わず助手席に乗り込むとすぐ車は動き出した。

  「わかったのか。」前方を見たまま匠が聞く。

「ええ。犯人達は発覚を恐れてでしょうか、隠れ家を4箇所ほど準備していました。ただ、いずれの家にもお嬢様はいらっしゃらず、捜すのに手間取ってしまいました。日下君がいなかったら捜し出せたかどうかわかりませんでした。」

「それで、首謀者はやはり駒木か。」

「はい。駒木裕一、高田譲二、森河準、城瀬俊彦の4名です。奴らはアニメゲイトを解雇されるとすぐドリームボーンという会社を立ち上げましたが、思うように軌道に乗らなかったらしく、ここ半年ほどは赤字が続いていたようです。」

「そこで以前から開発中だったDUEL 1に目をつけたのか。」

「おそらく。ところで奴らが解雇になった本当の理由は何なんですか?私は会長にあらまししか伺っていないので全てを把握していないんです。」

「アニメゲイトが3番目に手がけたカリクレインというゲームを知ってるか。」

「カリクレイン?・・・ああ、狩猟に見立てた人生ゲームですね。それが何か。」

「その一部のデータが他社に流出したという噂が流れただろう。あれは噂ではなく奴らがこっそり売っていたんだ。それも数社にね。そのあと似たようなゲームがあちこちから次々と発表された。噂が真実とわかった時点で奴らをクビにした。新スタッフとして柏木達が入ってきた。それからのアニメゲイトの業績は周知の通りだ。」

「そうだったんですか。それにしてもヒドイ奴らですね。」

「ああ。  ところで沙織はどこにいるんだ。」

匠は助手席のシートを倒し、疲れた身体を休めるように目を閉じた。目を開けていると太陽の光で目の奥がジンジン痛くなってくるのだ。しかし耳と脳はフルに回転させている。

「第3埠頭の商南倉庫です。駒木名義で1つのプレハブを1年ほど前に仕事場と称して借りています。」

沢木は前を向いたまま運転し続けている。行き先は告げなかったが阿吽の呼吸で察知するだろうと匠は踏んでいた。

案の定、車は得宗寺家の玄関に横付けされた。少しウトウトしたおかげで匠の頭はかなりスッキリしていた。こめかみを押すと瞼の奥でパチパチと音がしたような気がした。今まで生きてきた中でこんなに疲労を感じたことがないほど神経が参っていたが、弱音を吐いている場合ではない。一刻も早く沙織を助けなければならないのだ。

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