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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第42話

  匠の仕事は早かった。アニメゲイトの社長、日下洋を呼び出すと簡単に事情を話し、早速作業に取り掛かった。日下もDUEL 1の主要関係者3名に連絡を取り、沙織の件は伏せたまま匠を手助けするよう命じた。そして日下本人は沢木と共に沙織の居場所を突き止めるべく、匠の指示した場所へ向かった。犯人の目星はついている。匠からDEUL 1の件を聞いた刹那、直感した。あいつとあいつの部下数名だ、と。

 

  あらかじめテスト用に制作していたデモ機をもとに、匠たちは絶対攻略不可能な完成品を作り上げた。あらゆる方面から攻略してもあと一歩、というところまでくるとその先へ進めない。しかもそれが簡単に見破られてはならないのだ。ほんの少しの作業なのだが、彼らの脳細胞はフル回転させられた。なにしろ時間が迫っているのだ。無論、助っ人達は詳細をしらない。だが匠に全幅の信頼を受け、また、彼らも匠を信じているため異論を唱える者など1人もいない。ただ黙々と手を動かし頭脳を最大限に働かせた。そして完全なる不完全品が完成した。名付けて『どんな美味いものでもいい加減に作れば路傍の石ころ』“DUEL I”である。完全なものが“DUEL 1”であるのに対し、コピー作品は“DUEL I”・・いいネーミングだ。彼らはソフトの完成も嬉しかったが、何より名前に歓声を上げた。1とI。見ようによっては同じに見えるが発音が全く違う。意味を聞いたらのけぞって世間は笑うだろう。その時のことを考えただけで小気味よい。彼らの姿を見て匠は真実を話そうと思った。沙織が誘拐され身代金としてDUEL 1を差し出せと要求されたことを。それを聞いて益々メンバー達は奴らの悔しがる顔を想像し、笑った。

  「みんな。ありがとう。これで沙織は救われる。あとは日下たちが居所を突き止めてくれれば万事OKだ。」

「匠さん。オレ達はあなたの下で働けて最高に幸せです。なに、社長のことです。すぐお嬢さんの居所を探し出すでしょう。大丈夫ですよ。 さぁ、みんな!前祝だ!」

主任の木所が号令をかけると他のメンバー達の意気は大いに盛り上がり、揚々と仕事場をあとにした。残された匠は胸に湧き上がる感謝の思いで喉が詰まり、目の奥が暑くなるのを禁じ得なかった。

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