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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第41話

  5分、10分。時間が経つにつれジョージは沈黙に耐えられなくなってきたのか、机をトントンと叩き、足を小刻みに動かし始めた。そのうち部屋をウロウロと歩き出した。何度も腕時計を見るが思ったほど時間が経過しないのでその都度舌打ちをする。ふと沙織の脳裏にあることがひらめいた。もしかしたらこの男は使われているだけで首謀者は他にいるのではないか、と。そういえばさっき男は役目柄ガムテープを貼った。と言っていた。そうだ、ほぼ間違いない。この男、黒猫のジョージと名乗る男は見張り番としてここにいるにすぎないのだ。そうとなれば対応の仕方があるというものだ。沙織は身体が熱くなるのを感じたが、それが何であるのかはわからなかった。彼女の身体には得宗寺秀一の血が受け継がれている事に気づけば明白なのだが、普段、父と匠に押さえつけられている彼女にはそれと気づくにはまだまだ未熟だった。

  「ジョージさん、でしたわね。」自分でも驚くほど冷静な声がでた。

「なんだ!いきなり!」ジョージも同じように驚いたようだ。

「さっきから何度も時計を見ているようですけれど、何か急ぎの用事がおありになるのならどうぞ、いらして下さい。私はこのままじっとしていますから。」

「なに。そんな子供だましは相手を見て言うんだな。」

「見ていますわ。私は逃げたくても両手足を縛られているから逃げることなんてできません。それに、あなたを怒らせると怖い。ということは先ほど知りましたもの。」

『あなたを怒らせると怖い。』その言葉に気を良くしたのかジョージはふん!と鼻を鳴らした。その時、携帯の着信音が鳴り、また舌を打った。(この人は顔はキレイかもしれないけれど、ものすごくわがままで短気なんだわ。年は下だけれど匠さんの方がずっと大人だわ。)つい匠と比べてしまう。もしかしたら2度と匠の顔を見ることができないかもしれないという考えが頭をよぎった。涙が勝手に零れ落ち、まるで生きているかのようにどんどん流れ出た。

「ボクがそんなに怖いのかい?わかったよ。もういじわるはしないよ。それにちょっと用事ができてね、少しの間ガマンしてくれよ。ね?・・じゃ、ボクは行くよ。 カギは閉めさせてもらうからね。」

ネコなで声のジョージ、ではなく、黒猫のジョージはそう言って急いで部屋を出て行った。1人残された沙織には怖いとか淋しいという感情はなかった。ただ匠に会いたい、それだけが全身を占めていた。

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