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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第37話

  匠と榊原は勢いよく玄関のドアを開け、そのまま秀一の部屋へ飛び込んだ。ちょうど秀一と沢木の話が終わったところだった。

「どうしたのだ!」

「も、申し訳ございません。だ、だんなさま。一大事でございます!」

冷静であるべき執事が取り乱している。

「一大事?いったいなんだ!」

「は、はい。お、お嬢様が、お嬢様が、ゆうかいされました!」榊原の声は今にも途切れそうだ。

「誘拐?どういうことだ。」

鬼のような形相に榊原は震えながら例のメモを差し出した。

  ざっと読み下すと秀一はそのまま沢木に放り投げた。それを見た沢木はすぐ電話をかけようとしたが秀一にさえぎられ、怪訝な顔で主を見た。秀一は彼を見てはいず、ものすごい目つきで匠を見据えていた。

「君に期待していたんだがね。」

その口から出た言葉には全く感情というものが感じられなかった。生まれて初めて匠は世の中には目に見えない恐ろしいものがあることを知った。それでもあらん限りの勇気を振り絞って恐怖を撥ね付けようと試みた。2度、ブルブルと身体を震わせるとようやく恐怖に対抗する力が湧いた。

  「私にDUEL 1のダミーを作らせて下さい。お願いします。」

「匠さん!」

沢木と榊原が同時に叫んだ。匠は2人に自信たっぷりの目を向け頷いた。

「ほう!何か考えがあってのことなんだろうな。」

相変わらず秀一の声には人間らしさは感じられない。

「はい。犯人の目星もついています。」

「なに!いったい誰だ!」初めて人間の声らしくなった。

「それを言う前にダミーを作る許可を下さい。」

「許可するもなにも。あれは君のスタッフが作ったものではないか。いわば君に著作権があるということだ。好きにするがいい。」

「ありがとうございます。」ホッとした表情になる匠。

「でも。大丈夫でしょうか。」と榊原。

「大丈夫だ。こんな事態は予測していなかったけれど、試作として作っていたモノを奴等に渡す事はできるんだ。」

「やつら?」沢木は優秀な秘書である。

「ああ。アニメゲイトをクビになった連中だ。やつらはDUEL 1の構想時点でクビにされている。新作の名称は知っていても中味は全く知らないはずだ。それに他社の者ならアニメゲイトの新作すら知らないと思う。半年前に新作を発表したばかりだからな。沢木、おまえはあらゆる手を嵩じて沙織が囚われている場所を捜してくれ。榊原、おまえは屋敷内の者が動揺しないよう注意するんだ。いいか2人共、限られた時間内で全てやらなければならないということを忘れるな。オレはデモ機に手を加える。わかったな。・・・行け。」

匠の号令で2人は即座に行動を移した。匠も負けじと部屋を出ようとして、ふと自分を見つめる視線を感じ足を止めた。

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