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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
27/132

第27話

  「1本!」

見事な面打ち1本だった。

主審の声と共にワッと歓声が上がる烏城高校。一方、大きなため息を漏らしたのは朱雀高。今まで不敗神話を築いてきた周防匠の連勝が止まる! 校内新聞の見出しは決まった!とばかりに新聞部が駆け出す。ところが2人いる副審の1人が何やら抗議を主審に申し出た。身振りで窓の方を指差している。かなり長い時間3人で話し合っていたが埒が明かず、放送係を呼んだ。この大会は全国に向け生放送されているため、当然、映像が残る。主審はそれを利用しようとしているのだ。時間をかけ、最後の部分を再生してみた。そして・・・納得の答えが出たようだ。説明のため副審たちは席に戻った。

  「ただ今の試合についてご説明いたします。面打ち1本で烏城高校、佐藤君の勝ち、といたしましたが、副審の申し入れにより検討いたしましたところ、烏城高校に不正行為があったものとみなし、朱雀高校、周防君の勝ちといたします。従って3対2で朱雀高校が決勝進出となります。」

主審の宣言により朱雀高校が勝者となった。慌てて新聞部を呼び戻す応援団。烏城高校は当然抗議を申し立てた。それにもかかわらず、不正行為を盾に審判員は負けを覆さない。次の試合時間が迫っているため抗議はそれで打ち切られた。

  決勝戦はいとも簡単に決着がついてしまった。大将が出るまでもなく副将すらお呼びがかからず仕舞いだった。個人戦にいたっては予想通り、匠が圧勝し、不敗神話を更新した。勝利に酔った匠の写真を撮ろうと各メディアが押しかけた。それを振り切って車に乗り込む匠の表情は苦虫を噛み潰したようで、さながら予選で敗退した選手のようだ。これまでの匠も勝利した後、特に浮かれたことはなかったが、今回ほど苦しそうな顔を見せたことはなかった。残された他の部員達も一様に冴えない顔をしている。マネージャーだけがメディアの対応に追われ、さんざんな目に合った。

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