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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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114/132

第114話

  「榊原から伝言を聞きました。」

その声の低さに榊原は両のこめかみを押さえしゃがみこんだ。

「そうか。それで?」

「5つまでは可能ですが、最後の1つは承服いたしかねます。」

「最後?」

「お忘れですか。子供の件です。」

「おお!そうだった! だが、承知できんという理由はなんだ。結婚すれば当たり前のことだ。おまえは4月生まれだから法的にも申し分なかろう。親のスネをかじっている分際ならいざ知らず、おまえは既に収入を得ていて自立可能だ。何の問題もなかろう?それに子供を持つことで責任感も生まれる。もっとも、おまえに無責任という文言は無用だがな。」

これがカミソリと異名を持つ得宗寺秀一の言うセリフか。とあきれるほどの親バカぶりだ。さらに付け加える。

「私も早く孫の顔が見たいしな。」

そのひと言が匠の神経を逆なでした。

「いい加減にしてください!なにが早く孫の顔が見たいだ。たとえあなたの言う通りだとしても真っ平ごめんだ!」

「そう怒るな。 おまえまさか、沙織が嫌いなのか。 それでそんなことを言うのか?」

「そういう問題ではありません!精神的に早すぎる、と言ってるんです!」

「ほほう。おまえの口からそんなセリフを聞こうとは前代未聞の珍事だ。おまえがそうなら世の中にしっかりした大人など皆無だろうな。とにかく論ずるよりやってみろ。私はこれから会議がある。吉報を待っているぞ。」

秀一は匠の怒りなど全く意に介さず電話を切った。彼の怒りはもはや頂点に達し、そばでしゃがみこんでいる榊原を完全に無視し、大きな音を立ててドアを開け出て行った。

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