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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
105/132

第105話


  「そうですか。わかりました。ではご自由にどうぞ。ただし、今の話はあなたのためを思ってしたことです。下手に関わらない方がいい。と申し上げたかったのですが、ご理解いただけなかったようですね。・・・最後にもう1つ。あなたに与えられた時間は今日から数えて約3週間前後です。 それを考慮して素早く実行に移されることですね。 では、私はこれで。お忙しいところお呼び立てして申し訳ありませんでした。」

立ち去ろうとした匠を宮沢が「ちょっと。」と、引き止めた。

「何か。」

「彼女の連絡先を教えてくれないか。」

「聞かなかったんですか。」匠は軽蔑の眼差しを向けた。

「さっきも言った通り、今朝の時点ではそこまで考えていなかったんだ。だから聞かなかった。教えてくれよ。」

「簡単ですよ。電話帳に載ってます。  得宗寺秀一宅に電話すればオペレーターが出ますから、沙織に繋いで。と言うだけでいいですから。」

「得宗寺?」

匠の腕に掛けられていた手がビクッと動いた。

「そうです。得宗寺沙織。それが彼女の本名です。」

掴まれていた腕を静かに解くと、匠は後ろを振り返ることなくその場から去った。宮沢は何かとんでもないものを見たような表情で立ち尽くしていた。


  手術が巧いのか、匠の身体がすこぶる強靭なのか定かではないが、術後3日目にして退院の許可が下りた。元々主たるケガが腕なので普通に歩けるし、内臓は何ともないため早々に許可が出たともいえる。腹部は強めの打撲だからこれもまた特に入院して治療するほどでもない。従って喜ぶべきことなのではあるが、匠は素直に喜べない。退院後は自宅が周防家から得宗寺家へ変わるからである。そのことはすでに榊原から聞いていた。もちろん、匠は父たちの話から周知はしていたが、あえてそのことは伏せておいた。口にしたところで決定が変わるものではないからだ。かいがいしく身の回りの荷物をまとめている沙織を見て、ふと、宮沢のことが気になった。

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