第104話
「私が18になったら入籍する、ということです。」
「18? えッ、ってことは今17? うそッ。 ぼくと同じくらいだと思った。なぁんだ、そうなんだ。えっ?ってことは高校生?」
「2年です。 アレも同じ高校の同級生です。」
「アレ? そ・そう。アレ。アレね・・それでぼくにクギを刺しに来た。というわけか。」
「まぁ。 そんなところです。 わかっていただけますか。」
なるべくへりくだって話をしていた匠だったが、宮沢は匠が随分年下だと知り、急に横柄な態度に変わった。もっとも普通の高校生ならそれでもいいが、いかんせん、匠は普通ではない。初対面ということもあり、匠は冷静な態度を崩さず続けた。
「ですから今後、アレに近づかないようお願いいたします。」
「ナンセンスだ。」宮沢はくぐもる声で呟いた。
「何をもってしてそう仰るんです?」
聞こえていた、ということに宮沢は目を丸くした。囁いた程度だったのに・・・・
「きみは地獄耳か! そう、ナンセンスと言った。今どき許婚とか18になったら入籍するとか。くだらない!オレはそういうものが大っ嫌いだ!だいたいそんなことを言う人間に限って古臭い習慣に囚われて肝心な事実を見落とすんだ。ケッ!きみもそのクチだろう。高校生だって?親のスネをかじってる身分で結婚? 笑わせてくれるね。オレは生真面目な人間じゃないが、その手の冗談は好きになれないな。今朝、彼女に断られたときはどうでもいいやって思ったけど、こんな形でけん制されると逆にやってやろうって気持ちになるね。スネかじりの奴に負けてはいられない。オレはきみから彼女を奪う!」
堂々と宮沢は宣戦布告した。スネかじり。という言葉は匠の最も忌み嫌う言葉ではあるが、これ以上目の前の男を奮起させることはやめにした。