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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
102/132

第102話

  「屋上と院内を少し歩いて来たの。」

「それで。銀河鉄道ってわけか。」

「あっ!」

匠はすでに宮沢の存在を知っていたのだ。驚いた沙織は身体が次第に震えてくるのを禁じえなかった。真っ青になった彼女を匠は冷めた目で見ている。

「いつからおまえは榊原を名乗るようになったんだ。」

軽蔑した言い方に沙織の顔がさらに能面のようになった。

「おまえのSPには感謝しなくちゃな。なんでもかんでも全部注進してくる。おせっかいにもほどがある。どうせオレが退院するまでの自由時間だ。おまえも他の男とデートできるなら今のうちにしておいた方がいい。  それから。今日はもういいから帰れ。冬休みに入ったといっても家ですることがあるだろう。榊原に聞いてオレの部屋に荷物を運んでおいてくれ。」

あとはもういい、といわんばかりに匠は再び顔を背けた。ショックのあまり動く事ができずにいた沙織も彼の沈黙により除々に緊張が解けてきた。それでも顔には血の気が戻らない。身体だけが命令通り反応し気落ちしたまま病室を後にした。その少し後方を数名のSPがピタリと付いていった。


  その日のうちに尿の管が外され身体の自由を取り戻した匠は、宮沢賢治なる医師を探しに病室を出た。SPから当直明けとの報告があったため不在かもしれないと懸念したが、それには及ばず、沙織にフラレたせいなのかまだ院内にいた。面会を請うと、怪訝な顔つきで現れた。

  「ぼくが宮沢ですが、あなたは? お見かけしたところ整形の患者さんのようですが?」

「ええ、そうです。昨日手術しました。 周防匠といいます。」

「すおう、さん? それでぼくに御用とは? 立ち話もなんですから・・と、あそこに椅子に掛けましょう。」

そう言って宮沢は匠を面会者用のソファに誘った。

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