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TAKUMI  作者: 水嶋ゆり
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第10話

  翌朝。沙織が朝食の支度を整え匠の部屋へ行くと皿はそのままになっていた。いつもと違うことに少々不安を覚え、軽くノックしたが案の定、全く反応がない。何度か繰り返すと中から「うるさい!来るなと言ったはずだ!」とイラついた声がした。他人に対しては滅多に声を荒げない匠だったが、沙織にだけは常に怒ったような物言いをした。怒られることには慣れっこになっていた沙織も食事を摂らないという匠の行動に不安を感じたのも無理はない。それを正彦夫婦に告げると。2人は「放っておきなさい。」とひと言、言ったのみだった。

  遅刻するから早くでかけましょう。とドア越しに声をかけても応答はなし。やむを得ず沙織は1人で登校したが、結局匠は学校を休んだ。

  放課後、剣道部副部長の佐々木から匠の欠席の理由を聞かれた沙織だったが、彼女自身、本人から何も聞いていないので返答に窮してしまった。今までこんなことはなかったことだ。

「周防が来ないと士気も高まらんし、弱ったなぁ。来週全国大会があるって時に大将がサボってたらどうしようもないんだがなぁ。何とか沙織さんの力であいつを引っ張り出してもらえないですか?」

佐々木は本当に困った様子だ。とはいえ、頼まれた沙織もどうしていいのかわからないのだ。

「今日のことは私にもわかりません。今朝も怒鳴られました。」

「えっ。怒鳴る?あいつが?信じられない・・・」

  「佐々木さ〜ん!」

その時、部員の米田が遠くから走ってきた。

「お〜い、ここだ。何か用か。」

「キャプテンが!キャプテンが佐々木さんはどこだって捜してます!早く来て下さい!」

「えっ、周防が!来たのか?」

思わず佐々木と沙織は目を合わせた。一体どういうことだ。とにかく一刻も早く戻らなくてはならない。挨拶もそこそこに佐々木は沙織の前から走り去った。


  1日中、いや、昨夕からずっと不眠のまま朝を迎えた匠は、それこそ寝食を忘れ、ディスプレイに没頭していた。身体は心底疲れきっていたが、なぜか頭は冴え、時間の経過と共にそれは増していった。ふと気が付くと午後3時を少し回っていたところだった。練習に行く時間だ。学校は休んでしまったが、練習をサボるわけにはいかない。とにかく彼は家を飛び出し部室に向かった。


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