魔法をかけたのはだあれ?
聖夜に投稿するつもりが遅刻、作者は鈍重な豚だから仕方ないねブヒブヒ(ダブルピース・オークスマイル)
まぁ聖夜はもうね深夜まで離してくれなかったからね小説書いてる場合じゃなかったんですよガハハ(仕事)
婚約破棄もの(?)って一度は書いてみたかったんですよね
祖父の妹、私にとって大叔母様になるか?
ユリ―シア嬢の人生は王国史に残る数奇なものであった。
公爵家の令嬢として生まれ、蝶よ花よと育てられた彼女は天から多くの才を与えられた才人であった。
まず公爵家令嬢という家格と身分は言うに及ばず、秀でた頭脳、護身術の域を過ぎた並みの男など一顧だにしないほどの武芸を持ち得、現在では希少で便利な古式魔法まで扱えたという。
もし男であれば兄君らを押しのけて公爵家を継いでいたと噂されたほどだ。
そして、何より抜きん出て美しかった。
彼女の美しさを語る話の一つに公爵家お抱えの画家達が自身の無力さに嘆き筆を折ったなどというものまであるから驚きである。
噂の令嬢、格調高い公爵家令嬢である大叔母様を描いた肖像画が非常に少ない事からただホラ話ともいえないのが面白い。
美しく聡明な女子。
そんな存在が放っておかれるはずがない。
神童も長じればただの人、などと揶揄されたりもするが彼女に関してはそれに嵌まらず、歳を経る事にその美しさと聡明さ、才はより磨かれ、燦然と輝いているようだったという。
王家がそれに目をつけ王太子の相手へと望むのは当たり前すぎる話だったし双方にとって悪い話でもなかった。
事実、公爵家は快諾し彼女は粛々と受け入れ、厳しくも辛い日々の王妃教育をこなし、何の間違いや失敗もなく人生を歩んでいた。
だからその人生が失敗へと転落したのは彼女のせいではない。
あろうことか王子が恋をした。
それが大叔母様相手であるなら何の問題もない笑い話であったが事実は残酷だ。
王国では年頃の貴族子弟は王都にある学園区と住み、通い、交流を深め、学ぶ慣習がある。
平民にはない高等な教育を受け、近隣だけで無く遠方の貴族とも成人前より交流を持ち、次代の王国領地を滞りなく治める為に必要な教育措置が仇になった。
王太子が恋をした相手は騎士位の家、爵位さえ持たない貴族令嬢だった。
身分違いの恋。
高位貴族からすれば平民とさほど変わらない家格の女子に彼は恋をし、あろうことか貴族間の取り決めであった約束事の反故、最終的には大叔母様の婚約破棄という醜聞にまで発展した。
卒業間近における王子の婚約破棄劇、その顛末は貴族には悪夢、平民らには快を伴う立身出世の成功劇に見えるようだ。
後年、演劇の題材にもなったこの婚約破棄劇は貴族相手の演目、平民相手の演目ではその様相をがらりと変わる事からもわかるだろう。
大叔母様がはじめて味わう挫折であり、そして転落のはじまり。
その後の彼女におきた事、人生は今までの華やかな軌跡からすればひどく寂しいものとなった。
完璧な令嬢とまで噂された彼女が負った大きな傷は深く、癒し難く、他貴族の縁談にも首を縦に振らず、公爵家が所有する辺鄙な田舎へ、姉妹同然に育ち、昔から仕えるメイド一人だけを伴って早隠居してしまった。
――か弱い女とお笑い下さい、なにもかもに疲れてしまったのです。
当時の大叔母様が周囲に語った言葉である。
他者が羨む才を持ち、誰よりもそれを磨き、家に従順で完璧であった彼女がようやく絞り出した言葉は重く、親兄弟はもはや何も言えなくなってしまった。
皮肉な事にその絵に描いたような完璧さこそが王子には近寄りがたく、忌避されたものであった。
王子が恋した令嬢は愛らしい女性であったそうだが完璧とはほど遠い、よく言えば天真爛漫な人であったそうだ。
王子と問題の令嬢は恋に落ち、周囲の反対も押しきり、父王よりも課せられた罰、難題も一つ一つを二人で着実にこなし、大多数の予想を裏切り、件の令嬢は王妃教育を挫折することなく修めてしまったというから驚嘆である。
正に愛の成せる業なのか。
後の王と王妃、この二人の評価は貴族と平民ではいささか趣きが変わるのだが、その統治は客観視して言えば賢王といって差し支えないだろう。
大叔母様からすれば悔しくもやるせない話であろうが、隠居した彼女の様子、それは一見平穏そのものに見えた。
日の出と共に起き、土をいじり、畑を耕し、山や森に入っては狩りをする。
学問の追究、魔法の研究と知の探求はむしろ煩わしい俗世の関わり、人間関係が一切ないからこそ捗り、時に流通される貴重な霊薬は貴族の誰もがこぞって欲しがったという。
王都より遠く離れた地にありながら、公爵家や大叔母様の派閥貴族への発言権は増すばかりで夜会への誘いは増すばかりというのだから人間というもの、ことに貴族の付き合いというものは複雑怪奇といわざるをえない。
公爵家の魔女。
いつから彼女が影でそう呼ばれるようになったのかは定かではない。
婚約破棄された時、大叔母様は十五の娘であった。
それから十年、二〇年、三〇年以上を経てもその美しさは衰えるどころか増すばかり。
故に魔女。
口さがない連中の陰口であったが、大叔母様は薄く笑って
「毎日一つの林檎を食すのが美貌の秘訣ですよ」
と言っては市場の林檎を買い占める奥方、ご婦人を量産してたのだから同情よりもそのたくましさに呆れてしまう。
しかし、私は彼女の美しさの本当の秘訣を知っている。
幼い時分、私は彼女に邪気なく問うた事があるのだ。
「どうしたらそんなに綺麗でいられるの?」
と
大叔母様はしばらく笑んでは私の耳に唇を近づけ誰にも喋ってはいけない秘密を告白するように囁いた。
――替えのきかない一生の恋をずっとしているの。
そしてクスクスと笑う彼女は当時の自分よりも幼い童のようで、どこまでも無邪気に見えた。
なぜ彼女がそんな事を私に告げたのか、なにかの冗談か、気紛れか、それはわからない。
今となってはそれを知る術もない。
既に彼女は鬼籍で、その体は冷たい土の下だ。
私の知る限り大叔母様の近くに男の影はなかった。
その美貌と利用価値から多くの男が求婚したが全て袖にしてしまったという。
しつこい男は田舎まで、家にまで押しかけた事もあったそうだが付き人である住み込みメイドのモップに叩かれ、尻を蹴り出されるなら御の字。
あまりにもしつこく、ひどい者は大叔母様の魔法でメス馬に変えられ屈強なオスの農耕馬が住まう畜舎に放り込まれそうになって泣いて逃げた……というのだから流石に聞いていて顔がひきつる。
毎年、大叔母様の命日になると思い出すのだ。
あれは彼女の強がりや妄想ではなかったのかと。
ありもしない男の幻影を作って夢の世界に耽っていたのではないのか、それとも大叔母様は本当に魔女で、夜な夜な悪魔と逢瀬でもしていたのか。
妄想か現実か、彼女が誰と恋をしていたのか、していなかったのか、私には何もわからない。
たとえ痛ましい幻想でもいい、願わくば彼女の人生が、晩年が幸福に満ちたものであったと、そう思わずにいられないのです。
はぁ~なんだこの陰気なヤマもオチもねぇイミフな話はよぉ!!
でも作者的には好きをいっぱい詰められて満足なのじゃ、のじゃー
メタ的な目で見て令嬢の名前が“ユリ”ーシア
毎日一つの林檎が健康の秘訣は海外の言葉にもあり、栄養豊富な食材なんですけど、同時に林檎は禁断の実、その象徴・暗喩として作者は書いた
何もかもに疲れている彼女は誰と隠居した?
彼女は毎日なんの林檎を食べていたのだろう?(すっとぼけ)
ちなみに両思いですよ、婚約破棄された直後に二人で腕を組んでスキップしながら隠居した
以上!!