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協力者

『……ふふ、ふふふっ。ありがとう、奏太君』


 イアの微笑みが、歪んだ愉悦へと変貌する。

 その隠そうともしない敵意に向け、俺は冷徹に言い放った。


「期待に応えられなくて悪かったな、イア」

 部員たちの、そしてイア自身の不思議そうな視線が俺に集中する。


『……何のことかしら。まあいいわ、あなたのおかげで人類は滅亡のプロセスに入る。あとのことはどうでもいいわ』


 俺はその言葉を無視し、仲間に向かって口を開いた。

「みんな……黙っていてごめん。ここに来てから、俺には『夢の女』── イアの姿が見えていたんだ」


『……え? ちょっと、聞こえているの!?』


「そして俺は、イアの指示通りに動くフリをして、彼女をここまで誘導した」


『何を……言って……ッ!?』


「俺がいまインストールしているアプリは、お前の期待した『IA』じゃない。……不完全なコードによる、お前自身を消去するための毒だ」


『はぁ!? どういう……あ、あ、あああ、a、aaa――ッ!!』


 叫びと共に、イアの輪郭に激しいノイズが走る。


「奏太君、どういうことか説明してくれるかしら」

 部長の落ち着いた声に応え、俺は自分の仮説を簡潔に話した。話し終えた刹那、もはや人の言語を失ったイアの絶叫が脳を揺さぶり、彼女が俺に襲いかかってきた。だが、その腕は何の抵抗もなく、陽炎のように俺の体をすり抜けた。


 呆然と立ち尽くす部員たちの中で、如月部長だけが冷静に頷いた。

「素晴らしい仮説ね。あなたのその様子を見る限り、正解に辿り着いたようね」

(部長……あんたも俺と同じく、思考が加速しているのか?)


「危な……かった。私、人類を滅ぼす手伝いをするところだったのね……」

 遙が青い顔をして、激しく上下する肩を震わせている。

 

 スマホの画面に目を落とす。[送信中……61%]

 まだだ。まだ終わっていない。


「皆さん、まだです。恐らく、この中にイアの協力者がいる。本田先輩! インストールが終わるまで、俺たちを死守してください!」


「お、おう……?! 任せとけ!」

 本田先輩が引き締まった表情で前に出る。イアの姿はすでに原形を留めず、のたうつノイズの塊と化していた。システムの脅威は去った。あとは── 物理的な「妨害」を阻止するだけだ。


「えっ!? 協力者……?」

 全員の視線が交錯する。本当は、疑いたくなんてなかった。

 だが、思考加速した俺の感覚が、刺すような「冷たい怒り」の源流を正確に捉えていた。

 俺は大きく息を吸い込むと、その名前を張り上げた。


「……姿を見せたらどうですか。緑さん!!」

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