第3話 優しい人達
私達は風を切り、突き進んでいく。ベルバラ山に向かって。
「リリス、お前なんで知ってるんだ?ライブラのルイの弟子がベルバラ山に居るって。」
「どっかの本で読んだんです。本の題名は忘れてしまいましたが……」
「っていうかリリスはなんか持ってんのか?」
「なんかというと?」
「動いてもらう対価。そいつにとって利益のあるものだ。生き物はなんの利益もなしに動かんからな。」
「あ……」
ため息を一つつき頭に手を当てる。
「その様子だと何も無いだろ。金は?あるのか?」
「いえ……あまり無いです。」
「そしたら最終手段は魂だな。」
「魂……」
「魂を捧げる言ってもちゃんといつになったら捧げるみたいなのを設定できるからな。」
「……。」
『もうすぐでベルバラ山だ。降りる準備しとけ。』
「だってよ。俺も準備してくるからやっとけよ。」
屋根裏部屋に続く階段を上る。屋根裏部屋にはハンモックにテーブル、クローゼットしかなくあまり生活感はない。
クローゼットの中をまさぐり目と同じ色の透明で碧い宝石の着いた十字架を吊るしたイヤーカフを取り出し付ける。もう一度手を入れおもむろに瓶を取り出し鞄のかなに入れ、手すりに乗って滑り降る。
「よっし終わったぞリリス行くぞ。」
「は、はい。」
『あと15秒後に着陸する。大きく振動するから気をつけろ嬢ちゃん。』
「リリス、俺がいいって言うまで目つぶってろ。」
「え、は、はいぃ。」
目を瞑ると身体が浮き上がるような感覚がした。気になって薄く目を開ける。
「うわぁぁぁ。」
「あっ、お前なぁ、目開けるなつったろ。」
私はルイに肩に担がれていた。
「ったく、まあいいや。しっかり掴まってろ揺れるぞー。」
そう言うと1度大きく揺れるが段々と収まっていった。
「結構強かったです……ありがとうございます。」
「おうよ!取り敢えず出ようか。」
私達は扉開け、家の外に出る。地面まで10mはゆうに超えている。
「ちょっと待ってろ。」
そう言うとジャンプし、降りていった
「いいよー、降りてこい。受け止めるから。」
結構な無理難題である。
「怖いですよー、」
「大丈夫だから。はやくー。腹をくくれ。」
「わ、分かりました。絶対に受け止めてくださいね。」
「おうよ!」
「せーのっ!」
目を瞑りながらジャンプして降りる。最初は風の切けれる音しか聞こえなかったが途中から聞こえなくなり体が持ち上がる感覚がした。また気になって薄らと目を開ける。すると、目いっぱいに広がるルイの顔。そう、私がジャンプして飛び降りるのと同時に彼もジャンプし空中で私を受け止めてくれていた。
地面につき足で歩けるようになることが嬉しかった。なんなら地面にキスしてもいいくらいだ。それとも彼に?いや、やめておこう。
顔が少し赤くなるのを感じる。
「ちゃんと受け止めたろ?」
「それでもやっぱり怖かったです。」
「慣れて諦めろ。上がる時も俺が上まで飛ばすことになるから。」
「うぅー。」
『ルイよ、そろそろ行った方がいいぞ。日が暮れる。』
「そろそろ行くかリリス。」
「はい!」
私達はベルバラ山の頂上めがけて歩き始める。そこで舞い戻る悲劇があると知らずに。