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イカダナイト(1)

 

 六月四日 午後四時半 理恵宅



 さつきとショーコは学校の帰りに、理恵に誘われて、理恵の希望により、理恵の家の、理恵の部屋で勉強していた。


「いやあ、進むねえ。みんなで勉強していると。こりゃ最高だよお」

「進むって、何が?あんたがいる位置は変わらないわ。ノートが汚れただけよ」

 さつきはショーコのノートを指差して言った。


「汚れ・・・た。だけ・・・?」

「はっは、きびしいな。でもショーコは受験科目英語だけだろ、いいよなー」

 

 三人は床に置いた机に参考書とノートを広げ勉強していたが、やっぱしんどい、と言って理恵は床に転り端末を手にする。


「英語大変だよー。だって結局映画字幕ないとわかんないもん」

 

 そう言いながらショーコは、どれどれ、理恵ちゃんの頑張りを確認しよう、と理恵のノートを覗き込んだ。


「なにこれ・・・?え、数学なの?これは、どの辺からこんなことになってんの?うそでしょ。理恵ちゃん」

 ショーコは怯えながら理恵を見た。


「どこって。ちゃんと見ろ、おらああ」

 理恵は起き上がって参考書をショーコの前で広げる。


「えええ、おいおい。冗談はやめとくれよ。これ高校生のレベルじゃないよ。プロがやるやつでしょ」

「ショーコ、わたしは毎日だよ、これを。あの数学担当が担任だからさあ」

「さ、さつきちゃん。ここに数学の天才が」

「へえ、理恵のクラスここまで行ってるんだ」

 

 さつきは手を止めて理恵のノートをパラパラとめくる。


「え、ちょっとやめてよ。さつきちゃあん。その驚かない芝居」

「おいおい、ショーコ。さつきはなあ、中学のとき全国模試で、総合252番を取ったことがあるんだぜ」

 

 えええ、そんな!ショーコは手に持っていた参考書を落とそうとしたが、開いてたページが分かるようにそっと床に置いた。


「おい、ショーコ。そんなびっくりしてないならそのままでいいじゃん」

「いやあ、やっぱここはびっくりしないといけないと思ったんだけどさあ。でも、どこかわからなくなったら困るからさあ」

 ショーコは床に置いた参考書をテーブルに乗せる。


「あんた達、馬鹿にして・・・」

「ごめん、さつきちゃん。すごいのは分かるけど、やっぱこう一桁とかじゃないといまいち、さ」

「あー、なんか集中途切れたー。ちょっと休もうぜー」

「集中は大事だよお、理恵ちゃん。わたしも集中できなくなったから、集中するように集中するよお。でもそれは集中しないようにしないことにはまず始まらないから、集中しないように集中するよお」

 ショーコは床に倒れ込み目を閉じた。


「ちょ、起きなさい!まだ終わってない」

「おうらい。さつきちゃんが終わったときが我々の終わる時だよ。頼んだよ、船長」

「あー、それでいいわ」

 理恵はそう言いながらベッドに入り布団にくるまる。


「だれが船長よ!もう知らないからね!」

「おおー、反応が。ありがとうさつきちゃむにゃむにゃ」


 

 

「ちょっと、ねえ。理恵もう六時なんだけど」

 数十分後、さつきは床で寝ているショーコを避けて、ベッドにいる理恵を揺り動かした。


 うーん、意外と早かったね。さつきちゃんショーコはそう言いながら起き上がり目をこする。


「理恵反応ない。完全に寝てる」

 さつきは手を放し、頭まで布団に入っている理恵を見下ろした。


「まあしょうがないよ。さつきちゃん。わたしが起きたのも床で寝てたということが大きく作用していると」


 ショーコはふらふらと理恵が眠っているベッドに近づき、理恵ちゃん。シェンムーの話しようよ、ねえ。と声をかけ体を揺すった。


「だめだ。さつきちゃん。シェンムーでも反応しない」

「何よ。シェンムーって」

 

 さつきは端末を手に取って考えた後、鞄の中にしまし、理恵のノートに、寝てるから帰る。と書いてショーコと部屋を出た。

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