表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/94

ショーコ中古一軒家を買う(3)

 


 九月五日 午後三時五十八分 中古住宅内



 いくよお、さん、にい、いち。ショーコは録画のボタンを押した。


「ほお、ここが。うん、なかなか悪くないねえ」

 ショーコは先に靴を脱いださつきの背中を追った。


「なるほど。こっちが二階に続く階段でっと」

 ショーコは階段を下から上に向かってカメラを向けた。


「あ、先一階ね」

 ショーコはさつきの後に続いた。


「おお、家具は置いてあるんだね」

 ショーコはテーブルを持っている自分の手を撮った。


「これなら家族増えても大丈夫だね!」

 ショーコは椅子に座って、台所からリビングにゆっくりカメラを向けた。


「なるほど、リビングがあって横が和室か」

 ショーコはリビングで窓の外を見ているさつきの背中を追い越して、和室に向かった。


「どんな感じかなっと」

 ショーコは和室の引き戸を開けた。


「ひいい!何で仏壇があるの!?」

 ショーコはカメラを大きく揺らし、一瞬振り返ってさつきの背中を撮ってから、再び和室に戻した。


「びっくりしたあ、でもここは日当たりがいいんだね」

 ショーコは和室の中を上下左右にゆっくりと振りながら映した。


「でもよかった、写真立て倒れてて。これはさすがに触れないし触っちゃいけないと思う」

 ショーコは静かに引き戸を閉めた。


「一階はこれだけかあ。次は二階を」

 ショーコはカメラをドアに向けたまま、さつきの肩を触って、あっちあっちと指で玄関の方を指した。


「よし、次は二階だね!」

 ショーコは階段を上がるさつきの背中を撮った。




「はい、カットオオ」

 ショーコはカメラを止めた。


「おしおし、撮れた撮れた」

「はいはい、終わったのね」

 さつきは振り向かず二階に向かった。

「ここからは普通に撮るよ。わたしも初見だしね、さつきちゃんも存在感だしていいよー」

「はあ?なんでよ。今みたいに勝手に喋ってればいいじゃない」

「ほら、さっきの約束は終わったからさ。これからは関係ないから、より自由にやっていこうと」

「なんなの自由って」

 階段を登っていたさつきは視線を感じたので、振り返るとショーコがカメラを構えていた。

「ちょっと、何カメラを」

 階段を降りながらさつきはカメラを睨んだ。



「ねえ、二階って三部屋あるんだよね?どの部屋がわたし使えるのかな」

 抑揚のない口調でショーコは言った

「そういう問題じゃ」

「怒ってないで行こうよ、楽しみだな」

 カメラを持ったショーコは階段の踊り場でさつきを追い越した。

「なによ・・・。その喋り方は」

 さつきは戸惑いながらもショーコに付いて行った。


「最初は、ここを見てみようよ」

 ショーコは階段を登って左側の扉を開けた。

「わあ、広い!ここはパパとママのとこかな」

 ショーコが開けた部屋は二面に窓がある十畳程度の洋室で、ショーコは中に入り、あ、ここ見て。ウォークインクローゼットだよ、いっぱい服置けるね!とさつきにカメラを向けた。

「いや、だからそれなんなのよ!」

 ショーコは再びカメラをクローゼット内向けて、

「うーん、そんな怒らないでよ。ここはやっぱりわたしたちの部屋じゃないかもね。次の部屋を見てみようよ」

 ショーコはもう一度部屋の中全体をゆっくりと撮り、廊下に出た瞬間カメラを止めた。



「おしおし、一旦カット入れつつの、次の部屋に」

「ねえ、なんなのよ。さっきのは」

 さつきは腕を組んで部屋から廊下にいるショーコを見ていた。

「まあ軽い設定だよ。家族で家を見に来てさ、親は家のサイズに合わせた新しい家具を買うために、近くの店にメジャーを買いに行ってるんだよ。んでわたしたち姉妹が探索しているところっていう」

「なんであんたと姉妹なのよ・・・。でも、さっき一階で解説しながら普通に喋ってたじゃない。あれとこれ繋がるの?」

「あああっ、なんてこと!」

 ショーコはふらふらと揺れて廊下の壁に体をあずけた。

「また大げさな」

「さつきちゃんの言う通りだよ。わたしのキャラが違うから一階と二階で違う話になっちゃった・・・。うう、これじゃ使えないよ」

「もともと、どこでも使えないでしょ。そんなの撮っても」


 ええと、さ。ショーコはさつきを上目遣いで見ながら、

「相談なんだけど。あのもう一回、さ。最初から」

「やらない」

「そんなこと言わずさあ。テイク二を撮らしてよ」

「ほら、あと二部屋見て帰るよ」

 さつきは次の部屋のドアを開けた。


「一回こっきりの撮影じゃ無理あるよー。ねえ、さつきちゃんー」

 ショーコはさつきの後に続いて部屋に入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ