(8)「だから確約は出来ない」(宮本先生)
(承前)
宮本先生と私は少し顔を見合わせた。宮本先生が答えた。
「今回の主旨から言えば新聞が向いていると思うが、必要があれば放送委員会にも協力は頼むつもりだ。だから確約は出来ない」
清沢さんはクスッと笑った。
「宮本先生、率直な回答ありがとうございます。その条件で結構です。放送委員会の碧ちゃん出し抜けるかもしれないだけで充分です」
キヨキヨ相手に新聞委員会だけと約束したらその方が信用されなかっただろう。ここは宮本先生の判断が正解だった。
放送委員会の桜井碧ちゃんと新聞委員会の清沢紀代美ちゃんは犬猿の仲を装っている。学校の二大メディアのトップ二人なのでお互いに競争心はあり、下級生委員の手前そういう事にしているらしい。
宮本先生の動きも速かった。その日のうちに斎藤先生と調整して予備費での臨時増刊号発行費用負担が確約された。新聞委員会の記者委員たちは事情を知らされなかった。何かあるぐらいは考えたかもしれないけど、後で何か影響があるような話にはならないだろうと積極的に乗ってきてくれた。
校長先生と宮本先生へのインタビューは水曜日昼休みに取材。運動部への取材なども水曜日中に完了してその日のうちに版下が作られて校長先生と宮本先生に内容を確認頂いた。こうして木曜日の夕方には印刷所に版下データが送信され、金曜日夕方には印刷所の方が中央高新聞委員会室に臨時増刊号700部を持ち込んでくれたのだった。
清沢さんからはこんな臨時号は二度とやりたくないと言われた。
「せめて2週間欲しい。そういう条件なら考えても良いかな」
いや、キヨキヨ、ぜんぜんやる気あるじゃないの。