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04:ステータスバグ?

 立派な門を潜り抜けるとそこは、色とりどりのイカツイ男達の巣窟となっていた。

 うわっ!!むさ苦しいっっ!!!!

 まるで体育会系の部室を思わせるその様は、見ていてむさ苦しいの一言に尽きてしまう。

 というか、管理組合って何の組織な訳?

 ヤバイ空気をひしひしと肌で感じている俺をよそ目に、一輪の花が奥の受け付けカウンターへ向かってどんどん突き進んでいくものだから、俺も遅れを取らないようにしっかりと後を追った。

 チラチラと俺たちを見ている筋肉ダルマの花道を真っ直ぐ抜けてカウンターに着くと、そこには知的そうな綺麗なお姉さんが腰掛けていた。

 俺たちに気がついたのか、直ぐさま声をかけてくれる。

「こんにちは。こちらの組合のご利用は初めてですか?」

「うん、でも別のところで組合手札は作って持ってるからだいじょぶだよ」

「わかりました。では手札の提示をお願いします」

 言われ、懐から組合手札を取り出したアルはそのままお姉さんに手渡し、金属板のようなものに乗せると、手札を起点に透明な画面が浮かびあがった。しばらく画面を確認したのち、手札は再びアルに返却された。

「ありがとうございます。アルテリア様ですね。討伐数が十を超えてる方はなかなかお見受け出来ないんですけどね。……もしかしてヴェルマ様のお弟子様って言うのは……?」

「うん、私の師匠だよ」

 それを聞いていた周りの筋肉ダルマ達に動揺が走っている。あからさまに先程までの嫌な視線は跡形もなく霧散していたのだった。

 そんな凄いのか?ヴェルマって人は?

 ヴェルマがどれほどこの世界で有名なのか知らない俺としてはこんな程度にしか思わなかった。

「それで……後ろの方は?」

「ここへ来る途中で会ったマモル・フドウだよ。これからご飯行くところなんだけど、その前にそこの首を換金して欲しいんだよ」

 俺はカウンター脇にある換金口と書かれた方にヘルグライフの首を乗せる。

 やっと腕の力を抜けてホッと一安心する。

「ヘルグライフですか。また大物を狩ってきましたね。この辺では第一級危険生物として扱っていますので、それなりの金額をお支払い出来るかと思いますよ。では手札の提示をお願いします」

「あっ……俺は持ってないです」

「でしたら、今からお作り致しますね。こちらに利き手を乗せてステータスの表示をお願いします」

 ステータスの開示を促されるも、ステータスがどんな代物なのか知らない俺は困惑しながら受け付けのお姉さんに聞いてみた。

「……あの、ステータスって何ですか?」

「……ステータスですよ?」

「…………」

「…………」

 ごめんなさい!!異世界転生してきてるから分からないんです!!

 そう叫びたくなる衝動に駆られてしまう。しかしそんな事を言ったらどんな目で見られるのかはするまでもなく分かるので沈黙をしてしまう。

 両者気まずい時間が訪れ困っていると、横からアルが助け舟を出してくれた。

 マジ天使なのか、この子……。

「頭の中でステータスって念じて見て。そうすると出るからさ」

 アルに促され、右手を提示された金属板に乗せてステータスと念じてみる。すると、忽ち右手の甲から淡い青白い光が放たれ、そこに透明な画面が出現していた。

「ありがとうございます。ではステータスをこちらで用意した手札に連動させて頂きますので少々お待ちください」

 そう言って奥の方へと消えていくお姉さんは、しばらくすると奇妙な顔をして再び戻ってきた。

「……あの……度々申し訳ありません。もう一度ステータス表示して頂いてもよろしいでしょうか……?何故か機械の故障のようでして。こちらに新しいのを持ってきましたので、お使い下さい」

 どうしたんだろ?と思いながらも、新しい金属板がカウンターに置かれたので再び手を乗せてステータスを表示させる。

「……ステータスからパラメータの方に切り替えて頂けますか?」

 ステータスには自分の姿のようなものが右側に描かれており、左側には上から順にパラメータ、スキル、オプション、と並んでいた。

 指示された通りにパラメータを押してみると、表示が切り替わり現在のレベルや攻撃力、防御力などの数値が分かるようになった。

 しかしそこに映し出された奇妙な数値に目が点になってしまったのだ。


【マモル・フドウ age:18】

【レベル:1】

【体力:65】

【物理攻撃:1】

【魔法攻撃:1】

【素早さ:12】

【物理防御:9999】

【魔法防御:9999】


 …………防御力可笑しくね?

 あからさまに防御力の数値が飛び抜けており、最早バグなのではないのか?と疑うレベルで可笑しな事になっていた。そしてそれに比べる事も憚れる程に攻撃力が底辺に到達していた。

「あの、なんか変なんでけど……?」

「可笑しいなぁ……やっぱり新しい機械でも……」

 と、質問した俺にボソリと呟くお姉さんは困った顔をしていた。

「……わかりました。では取り敢えずはこれで登録の方をさせて頂きますので、この事は上に報告しておきます。……すみません。こんな事は初めてでして……」

 申し訳なさそうに謝るお姉さんに大丈夫と手を振って答えると、頭を下げてお姉さんは登録をする為に奥へと消えて行った。

 俺はもう一度自分のパラメータを確認してみる。しかし幾ら見ても、何度タッチしてみても変化は見受けられなかった。

「うわっ、なんだこれっ」

 身長が俺よりも二十センチ程小さいからか、背伸びをしてこちらのパラメータを覗き見てくるアル。頑張っているつま先がプルプルとしていた。ちなみに俺は百七十センチである。

 …………ふむ。

 その可愛さをもうしばらく拝む為に決して屈むという優しさなど見せる事もなく、パラメータに視線を戻す。

「なぁアル。ステータスが壊れるって事はあるのか?」

「そっ、そんな事聞いたことも、見た事もないからっ」

 つま先がプルプルしているから、声までプルプルしている。

「……うーーん。叩いて治らんかねぇ」

 手で触る事が出来るので、バシバシ叩いたのだがまともな数値に戻る気配は無かった。

 ひと昔前のブラウン管テレビならこれで治ったと聞いたのにな。

「……でもさ、もしそれが正しかったら……大変な事だよ」

 今までの雰囲気とは違く、つま先立ちを辞めて神妙な面持ちでそう告げてくるアル。

 つま先立ちを辞めてしまった事に顔には出さないが残念な気持ちになってしまった。今後もステータスを開く時は絶対に屈まないようにしようと静かに誓っていた。

「ちなみにアルの防御力はいくつなの?」

 アルはヘルグライフを軽々と倒した手練れなのだ。もしかしたら俺よりもずっと高いのかもしれないと思ったのだが、

「私は物理防御2500、魔法防御は1300くらいだったかな」

 という一言で直ぐに潰えてしまう。

「ちなみにだけど、私の師匠でも物理、魔法防御は4000くらいだからね?」

 最後に会った一年前くらいの話だけど、と教えてくれた。

 筋肉ダルマ達が一斉に青くなる程のアルの師匠ですら俺の数値には及ばないのだ。確実に転生の際にバグってしまったようだった。

 そんなこんなしているうちに、お姉さんが戻ってきた。

「登録が完了致しましたのでお受け取り下さい。今、本部の方へ連絡を送っておきましたのでしばらくしたら返事が来るかと思います。……そこでお願いしたいのですが……もうしばらく街に滞在して貰えないでしょうか? 急ぎの用事とかありますか?」

 異世界転移して来たばかりで急ぎの用事などあるはずがない身なので、特にない事を伝える。

「よかった! では返信が参りましたら連絡致致しますので。……お泊まりの宿はお決まりですか?」

 そう言えば滞在するとなると宿に泊まる必要があるのか、と今更になって気がついた。しかし俺は一門無しなので、当然宿の決まりがないと伝えようとしたのだが、

「商業区にあるリゴンの籠だよ!」

 脇からスッと出てきたアルがお姉さんに答えていた。

 えっ、俺そんなところ知らないんだけど。

「オスカーさんのところですね、わかりました。では連絡が入り次第お伝えに向かいますね」

「あ、はい。……よろしくお願いします」

「ではこちらがヘルグライフの換金代になります」

 取り敢えずそう伝える事しか出来なかった俺はヘルグライフの換金代を貰い、お姉さんに笑顔でお見送りされて外へ出たのだった。

「……俺、だから一門無しなんだってば……」

「私と一緒に泊まればいいじゃん? 私も少し滞在しようと思ってたし」

 外へ出てからアルに訴えたのだが、あっけらかんとアルに衝撃発言を申されて黙るしかなかった。

「以前にお世話になった宿なんだ。じゃ、ご飯食べてから向かおっか」

 ゆっくりとした足取りで前を行くアルを呆然と見つめ、一言。

「…………マジですか?」

 口から零れ落ちていた。

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