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「だーかーら、ね? 次は僕も一緒に行きたいなー、別にいいでしょ?」
「そうだよお兄ちゃん! ジェシーちゃんって一等級の冒険者なんだし、お兄ちゃんどうして離れたのか不思議なぐらいだよ! ねぇ、いいでしょ?」
あれから少しの時間が経ち、ジェシカとミーシャの距離が随分と近くなっていた。
アオもその二人に食事を分け与えられたり、触られたりしていたが、嫌そうな顔もせずに少し戸惑いながら相手をしていた。
「……ついてきてもいいけど、等級の高い依頼は受けないぞ? そろそろ2等級の依頼を受けるかって考えていたぐらいだからな」
1等級冒険者にとっては、難易度の低い依頼は報酬が低い事もあり、同じような仕事ならわざわざ受ける事はないだろう。
更に1等級までになると依頼次第では1等級限定で追加報酬なんてものもあるぐらいだ。
わざわざ低い等級の依頼を受ける必要はないのだが
「だーかーら、別お金なんていらないんだってー。報酬も僕の分はなしでもいいよー? あ、なんだったらアオちゃん貰ってもいいかな?」
「ジェシー、お前なぁ……」
「アオは絶対、ぜーったいあげませんよ!! ねぇー、アオ!」
「……えっと、は、い?」
酒も入ってきたためか、ミーシャはいつも以上にアオにべたべたとひっついているが、何かとアオの事を気に入ってしまっているジェシカに警戒の目を向ける。
その目を見てもジェシカは顔はミーシャに向けてはいるが、目線はこちらに向けて、小さく唇をなぞるように舌をなぞる仕草を行う。
「まぁ、ジン君がどういったって僕はついて行くつもりだからね~、ミーシャちゃんもそれでいいよね~?」
「は~ぃい! 賛成ですぅ!」
ジェシカは自分の酒が入った器をミーシャに向けて持って行き、小さな音をならすように乾杯を行う。
「えへへー、私嬉しいなぁー」
「んだよ?」
その中でミーシャはぽつりと言葉を漏らす。
「女の子の友達ってこれまでアリアさんぐらいでなかなか作れなかったから~、嬉しいなぁ~」
「あはは、可愛いなぁーミーシャちゃんは。ジン君の妹だもんね~、僕の事はお姉ちゃんって呼んでくれてもいいんだよ~?」
「えー! 友達がいいのにお姉ちゃんですかー? んー、でも悪くないかもしれません! お姉ちゃんかー、お兄ちゃんもいるし、アオもいるし、お姉ちゃんも出来たし、なんか家族みたいですね!」
「家族ってお前なぁ」
「かぞ……く……」
「家族か~、いいね-! 僕も賛成だよー!」
そうして時間が過ぎていく。
「んー、お腹も一杯だしそろそろかなー?」
「ジェシカさん、もういきますかー?」
「ジェシーでいいよって言ったでしょ-? 別にお姉ちゃんでもいいんけどねー」
「やっぱりお姉ちゃんってすぐに言うのは照れくさいので、ジェシーさん……かジェシーちゃんって呼んでもいいですか!?」
「ミーシャちゃんが呼びやすい方でいいよー! なら僕もミーちゃんって呼んじゃおうかなー」
机の上に置かれていた食事も酒も殆どが空になり、どちらが飲ましてしまったのかアオもお酒が入ってしまったのか、それとも空気で酔ったのかはわからないが、いつもより顔を赤らめながら半目のまま頭を揺らして何度も俺の方に頭をぶつけてきて少し経った頃だった。
「お腹も一杯になったことだし、僕の取っている宿も近くだし、そろそろ行こうかー」
「そうですねー、良い時間になってきましたし、そろそろ出ましょうかー!」
「うん! 久しぶりだし、楽しかったから今日は僕が出しておくよ-!」
ミーシャは悪いからと自分の財布からお金を取り出そうとしていたが、ジェシカの財布からは金貨しか出てこず、更に釣り銭までも受け取る素振りを見せなったので「ジェシーちゃん! おつり、おつり!」と戸惑っている様子を「んー? ならミーシャちゃん貰って置いてー!」と自分は受け取るつもりもなく金貨だけを置いて外に出てしまう。
「じゃぁ、いこっか?」
「え? 今からどこかいくんですか?」
「ん? だから僕の宿が「ミーシャ、アオが眠そうだろ? 先に連れて帰ってくれよ」」
店に出た後、俺は強引にミーシャとアオを帰るように促す。
「えー、僕もっとミーシャちゃんとアオちゃんとも一緒にいたいなー! もちろん、ジン君とが一番だよー? もしかしてー?」
「ミーシャ、気をつけて帰れよ?」
「でもお兄ちゃん、私も」
「いーいーから、お前もアオもフラフラじゃねぇか、ジェシーは……あれだ、飲み足りてねぇだけだから、今からもう一軒行くんだよ」
「なら」
「ならじゃねぇよ。もう夜も遅いだろ? お前も眠そうにしてんだから、また今度、な?」
といって無理矢理二人を帰路につかす。
「ふふーん? もーしーかーしーて、2人の方が嬉しいのかなー? もー、ジン君、昔に比べて随分と静かになっちゃったなーって思ってたけど、やっぱり恥ずかしかったんだー? 僕はそんなこと気にしないのにー」
「別に……そんな事ねぇだろ。昔からこんなもんだったろ?」
「えー、そっかなー? でもミーシャちゃん帰っちゃったかー、せっかく楽しくなるかなって思ったのにー」
「楽しいってなぁ、一体全体何しようとしてたんだよ」
「何って、男の子と女の子なんだからー決まってるでしょ?」
「お前なぁ、ミーシャは俺の妹だし、アオに至ってはまだ子供なんだぞ?」
「僕にはそんなこと関係ないよね? まぁいっか! ジン君がいてくれるだけで僕は嬉しいし!」
他の店に入ることもなく、俺やミーシャが普段使っている宿に比べて随分と佇まいの立派な宿にて一晩を過ごした。
「ほらほらー、久しぶりだし、楽しまないとね」
俺がミーシャとアオが待つ宿に戻ったのは結局次の日の昼間にも差し掛かる頃だった。
ジェシカとは一旦別れたものの、後ほど依頼を共に受けるために冒険者組合で待ち合わせする事になっており、宿の扉を開くとミーシャとアオも二人とも起きており「ふ~ん? こんな時間に帰ってくるなんてやっぱりそういった関係だったんだ~?」とからかわれたが、相手をしても仕方ないので依頼を受けることを伝えて外出する準備を急がせる。
「でもね、お兄ちゃん?」
「んだよ」
「私達が依頼受けてる間、アオはどうするの?」
「……ぁ、本当だ。そこまで考えてなかった」
これまでは自分の事か、ミーシャの事だけを考えて動いていれば良かったのにアオはどうしたものだろうか。置いくとしても、数日空けてしまう事もあるだろうし、何かやるこ事がある訳でもないしで、一人っきりは不安しか残らない。連れていくのは危険な目に会う可能性が十二分にありすぎだ。
ミーシャを最初に連れいくと決めた時と比べてアオは魔法が使えるわけでもないし、戦い方を教わった事もないだろうしで、どうしたものだろうか。




