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待ち合わせの時間になり、3人で広場に向かうとジェシカは先程と同じ場所で数人の男に声をかけられていたが、俺たちが見えたようで手を振りながら近寄ってくる。
「あれ? アオちゃんの手枷外してあげたんだ?」
「あぁ、だからもう奴隷じゃねぇよ」
「ジン君はやさし~な~。じゃぁどこ行こっか?この街の事についてなら詳しいでしょ?」
俺たちは広場の近くに店を適当に選び中に入る。
「ジェシカさんってお兄ちゃんといつ頃知り合ったんですか!?」
「結構前だよ~? 2、3年ぐらい前かな? それにジン君の妹のミーシャちゃんなら僕の事はジェシーって呼んでくれいいよ~」
「どうやって知り合ったんですか?」
「ジン君が魔獣と戦っていた時に偶然かな?」
「ジェシカ……ジェシーさんも冒険者なんですよね?」
「そうだよ-、ミーシャちゃんも冒険者なのかな? あ、ジン君って等級いくつになったの?」
「少し前に3等級に上がったぞ」
「おー、ジン君も立派になったねー!」
「立派ってお前なぁ」
「あれ? ジェシーさんって今おいくつなんですか?」
「ふふ、いくつだと思う?」
「私と同じか少し上かな?」
選んだ店は少しばかり小綺麗な店舗で、金銭的に別の店をと思ったのだがジェシカが「お金? 心配しなくて良いよ? 知ってるでしょ?」と俺たちの背中を押すように入店をしてしまった。
「僕、嬉しいなぁ~。ジン君にも久しぶりに再会できただけじゃなくて、可愛い妹ちゃんにも、可愛いアオちゃんにも会うことが出来たなんて!」
「可愛いなんてー! ジェシーさんの方が可愛いですよ!」
「そうかな? ありがとう!」
お互いに可愛い、可愛いと言い合っている女同士の会話に入る事は難しいな。
ミーシャがアリアと出かけるときに何回か一緒に出かけたことがあったが、荷物持ちとして使われた記憶がふと過ぎる。
「ミーシャちゃんはいつから冒険者になったのかな? 階級はジン君と同じ3等級?」
「あはは、そんなすぐになれませんよー。丁度1年ぐらい経つ頃かな? 初めの頃はお父さんもお母さんもどうせすぐ戻ってくるって思っていたらしいんですけど、最近は元気にしているなら久しぶりに帰ってこいよ。とかそんな手紙ばっかりくれるようになってー」
「そうなんだー、いいお父さん達だね! ジン君は僕に家族の話を全然してくれなかったんだよー?」
「えー、どうしてどうして?」
「別にいいだろ? なー、アオ?」
当時の俺はは、家族の事を話す事は、自分の引け目を感じて出て行く為に冒険者になった事を回りに知られたくないと思ってしまっていた時期だ。
全部自分がやりたいからやったこと。それ自体は間違いではないのだが、舐められない為にも、強い自分でいなければいけないと思っていた。
それを直接伝えるのはやはり恥ずかしい事で、先程から聞いているだけのアオにも俺たちだけでなく、他の人との接点も持って欲しいので話を振ってしまったのだが「……えっと、家族って、わから、ない……で、す」と分かっていた事に触れてしまって少し後悔してしまう。
会話を振るにしても話題がアオにとって最悪だったな。
「アオちゃんって家族の事知らないのかな? ならお母さんが奴隷だったのかな? 困った顔も可愛いなぁ、僕だったらすぐ買っちゃうよ? こんな子買わないなんて、みんな見る目がないなーって、もう奴隷じゃなかったね。僕の所に来る? お世話しちゃうよー!」
「あ! ダメです! アオは私とお兄ちゃんが育てるって決めたんです! ね、お兄ちゃん!」
「だな。 だからジェシーにはやらねぇぞ」
「ケチだなぁー」
アオの事は、しっかりと話し合い決めた事でこの事についてはアオ自身からいってこない限りは、変えル事はない考え。仮に大金を積まれたって所でアオを手放す事はないだおる。
俺とミーシャはそう結論づけたのだから。
それに。
「ジェシーは相変わらず、冒険者してたんだな。そろそろ実家に帰ってやったらどうなんだ? 心配されてんだろ」
「ジン君は知ってる癖にそんな事言うの? 今帰ったりしたら、どこかに嫁入りさせられちゃうよ! そんなのジン君が悲しんじゃうでしょ?」
「え? 嫁入り?」
「そうなんだよー、好きでもない相手と結婚なんてしたくないよね? ミーシャちゃんもそう思うでしょ?」
「もちろんです! 嫁入りって事は、ジェシーさんって貴族の家の?」
「だよー」
「しかも一人娘だからな」
「人の事は知ってるのに、自分の事は言わないなんて、やっぱりジン君は意地悪だなー」
「お前が自分から話したんだろうが」
「貴族なのに冒険者してる人って珍しいですよね! でも、納得しちゃうかも! それにジェシーさんって、能力持ちの方なんですよね? 昼間に広場でお兄ちゃんとそんな会話していたし!」
「だよー、味わってみる?」
「ぜひぜひ!」
「お、おぃジェシー!」
「大丈夫だよ、軽くだけだからね? ミーシャちゃん、僕の目を見つめてみて?」
ジェシーは自分の能力を発生させる条件として、ミーシャに自分の目を見るように伝えると「目をですか?」と顔を合わすように目線をジェシカと交わる様に見つめ返す。
ジェシカの片目が、瞬時に変わる。
先程までの眼光ではなく、色変わり、目に小さな魔法陣のような模様の中に十字の模様が浮かび上がる。
「あ、れ?」
ミーシャと俺の動きが鈍くなる。
「もう、終わりだ」
昼間の様に、全身だけではなく、首も締め付けられるように完全に拘束されてしまった感覚とは違い、全身が鈍く、麻痺しているように微かに動く程度なら出来そうな感覚。
それゆえに、まだ動きが、呼吸が、会話が可能なので、すぐに止めに入る。
「はーい! どうだった? 僕の能力」
ジェシカの目の色が先程の。能力を使う前の状態に戻ると、体に麻痺、しびれが消え去る。
「え? あれ? 私、さっき動けませんでした! それがジェシカさんの能力なんですか!?」
「そうだよー!」
「動けなくする能力って……え、凄すぎないですか!?」
生物なら、動きを止める事が出来る。
それは人だろうが、動物だろうが、魔獣だろうが。
「こんなスゴイ能力を持ってるって、ジェシカさんって、冒険者としての等級も、かなり上ですよね!」
「別に能力なんてなくても僕は大丈夫なんだけどねー? 等級は1等級だよ-、カンタンになれるからミーシャちゃんもすぐだよー!」
ジェシカは俺の知っている中でも一番に強いだろう。
等級が1等級だからという訳だけではない、素直に戦闘技術に置いて、グレイブの話しにで出てきたアルギクルルガが3体同時に襲ってきたところであっさり倒してしまうだろう。
それは、能力を使わなくても。
それほどまでに、この少女は強いのだ。
「ジン君も、早く1等級になればいいのに! ならお金なんて幾らでも入ってくるよ?」
少女は、さも当然の様に。
それがどれ程難しく、多くの冒険者達が目指した場所であったとしても、別れるまでにはもう1等級になっていた少女。
13より冒険者として家を出て、僅か4年あまりで1等級になった少女。
冒険者組合が自ら個人の情報を流すことがないとしても、冒険者同士の情報網から話題にもなる。
貴族上がりの幼い少女が、記録的速さで1等級まで上り詰めた事を。
「ミーシャ、信じるなよ。ジェシーみたいなヤツがおかしすぎるんだよ。」
それなのに、相手の動きを止める能力まで持っているのだ。
誰がこの少女に勝てるのだろうか。
2等級、1等級の冒険者と対人戦をした場合でも、やり方次第では勝てるだろう。
実績で昇っていった者は、経験によって築かれた技術はあるが、つけいる点がなくはないだろう。
それでもジェシカと立ち会ったなら俺は勝てる気がしない。
冒険者になって5年目になるが、冒険者になるまではわからなかった事があった。
おとぎ話の様に、圧倒的強さを持つ者がこの世の中には沢山いるという事を。




