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異世界の物語  作者: もぐな
第⒉章
65/71

47.

 



「突然なにやってくれてんだよ! わざわざ能力まで使いやがって!」



「だってそうしないとジン君逃げちゃうかなって思ってー、ね? 本当は嬉しいくせにー!」



 ジェシカは異世界人ではなく、こちらの世界の人間でありながら能力の持ち主である。スズキの様に別の世界から来た者達は殆ど何かしらの能力を持っているらしいが、普通は能力を持って生まれてくる者なんて1国に1人いれば良い方らしい。


 自国から使える能力持ちが生まれた場合は、異世界人と比べもののならない程、国全体でその者を持ち上げていた時期もあった程らしいが、俺が子供の時から今に至るまでどこかの国でそういった祭りみたいな行事があったなんて聞いた事もないのだから、相当希少なのだろう。



「そんな事より、ジン君? そこにいる子たちは誰かな? お兄ちゃんとか呼んでよね? 妹さんが居るなんて聞いた事もなかったし、もしかしてジン君はそういった趣味があったの? なら僕もジンお兄ちゃんって呼ぶようにしようかな~」



 ジェシカはミーシャとアオをそれぞれ見比べ、ミーシャは獣人としての耳が生えてはいるが、顔も耳の形も、髪の色も違う。アオに至っては人間で、さらには手枷付けているので奴隷だと丸わかりだろう。



「ねぇねぇ、君お名前は? 可愛い顔してるね! 耳触ってもいいかな? そっちの小さい子もお名前は何かな? 顔の傷は痛くない? ちっちゃくて可愛いなぁ~、ジン君も奴隷の子にそういった事するようになったんだ~、僕もされちゃうのかな~? 怖いな~」



「ぁ、えっと、私はミーシャって言います! えーっと、お兄ちゃんはお兄ちゃんで、この子はアオって言います!」



 ジャシカが2人に対して質問攻めを初め、更には許可もなくミーシャの耳を触ったり、アオの顔の傷を撫でるように触り始める。


 先程、ミーシャよりも少し大人びて見えていたという言葉も撤回して、今では玩具を見つけた子供のように振る舞う。



「へぇ~、ミーシャちゃんにアオちゃんか~! よろしくね! 僕はジェシカ・ベルフォーラだよ! ミーシャちゃんは本当の妹さんなのかな? でも全然似てないよね?」



「ジェシー、いい加減質問ばっかりしてんじゃねぇ。ミーシャは……本当に俺の妹だ。それにアオの傷は俺が付けたんじゃねぇ。誰が好き好んでそんなことするかよ」



「本当の妹さんなのか~! うん、ジン君がそういうならわかったよ! ならジン君はそんな子を買ったの?」



「買ってねぇ、拾ったんだよ」



「アオを連れていた商人さんの馬車が襲われちゃってて、それを私達が助けたんです!」



「へ~! そんな事があったんだ! もー、僕もそこに一緒に居たかったな~」



 そんな話をしていると、2人の男が間に入るように言葉を挟む。

「ジェシカ氏! そろそろ向かわないと!」

「そうです、そうです! 依頼主ももう待っておりますぞ!」



 2人は、ジェシカと同じ依頼を受けており、出発の準備ができたから呼びに来ていた。


「ほら、呼ばれてんぞ?」



 ジェシカは今から依頼だし、俺たちも今から奴隷商の元に行かなくてはならないのでミーシャとアオにも動き出す合図を送りながら、ジェシカにも呼ばれているからそちらに向かうよう促す。



「んー、ジン君? いつからこの街にいるの?」


「まぁ、それなりにだな」


「ねぇねぇ、ミーシャちゃん、どうなの? まだしばらくこの街にいるのかな?」



 俺の曖昧な返事よりも、初対面ゆえに正確に答えそうなミーシャに会話先を変更するジェシカ。



「えっと、まだしばらくいると思いますよ。ね、お兄ちゃん?」



「まぁ……そうだな」



 早く依頼に向かってくれれば、少なくても数日、それか今回の依頼が長距離ならしばらく帰ってこないだろう。こっちも数日すれば依頼を受けに行ってるだろうから、またしばらく会うことがなくなるはずだ。ミーシャがどんな風に答えようがこの場を切り抜ければどうにでもなる。



「そっかー! んー、決めた! 久しぶりだし今日はゆっくり話そうよ! うん、そうしよう!」



「は? 依頼受けてんだろ? しかも待たしてるんだろ? 早く行ってこいよ。 戻ってきたら幾らでも話せるだろ? さっきもミーシャが言ってた様にしばらくこの街にいる予定だし」



 後ろで聞いていた男達も「ジェシカ氏! それはいくらなんでも!」「そうですぞ! それに、こんな目前で取り消すことなんてすれば契約金だけでなく違約金まで発生してしまいますぞ!」と俺の意見に同調してくれているので、なんとか流れを持って行きたい。



「なら、その依頼断っててよー。はい、これぐらいでいいかな?」


 そんな事をもろともしないように違約金分なのか金銭をあっさりと男達に渡してしまうジェシカ。



「でさー、ジン君。これからどこにいくの? 一緒にいくよ~」



「お前なぁ……、大事な依頼だったりしねぇのかよ?」



「ぜーんぜん! 暇だったから適当に選んだだけのヤツだしー! ほらほらー、いいよねミーシャちゃん、アオちゃん?」



「私は大丈夫です! けど、本当に大丈夫なんですか?」



「ダメに来まってんだろ?」



 もう一度募集のやり直しなんて、手間の掛かることをこんな投げやりに取り消しされてしまえば、依頼主からしても迷惑極まりない。




「そうですぞ!」

「ジェシカ氏! 行きましょう!」



「もー、大丈夫だって! お金だって渡したでしょ? 足りないならもっと渡すよ?」



 そういってジェシカは金貨を何枚も取り出して、男達に渡そうとするのだ。



「こ、こんなに!?」

「自分たちでは、決めれないですぞぉ!」勿論素直に受け取れるはずもなく、困惑する男達。



 ジェシカは、昔から金銭に困っていないからできる芸当だろう。


 それでもジェシカは男達の事をこれ以上相手しようとせず、俺の腕を引っ張り歩き出そうとするのだ。


「おま……」



 これ以上は、もう無理なのだろう。

 ジェシカは決めたことを滅多に変えようとしなかった。

 あれから少し時間が経ってはいるが直っていないのだろう。



「ジェシー、断るならせめてお前が直接行かねぇと、そいつらだけじゃどうしようもないだろ?」


「そうかなー? んー、わかった! なら皆で一緒にいこうよ!」


「それはできねぇ、俺たちも今から行かないと行けない場所があるからな」


「ならそっちについていくよ?」


「だーかーら!」



 当初いた人混みだけに限らず、今に至るまで、言い争っているような会話を聞かれていた為、なおさら通行人からの注目を浴びてしまっている。



「えーっと、私から提案いいですか?」



 ミーシャが片手でアオの手を握り、もう一つ空いた手を少し上げて目線を集める。



「なら、後で待ち合わせとかしませんか? 今からアオの事で私達は奴隷商の所まで行かないと行けないんですよ。ジェシカさんも依頼主さんの所にいかないといけないですよね? その後でもう一度ここに集合とかどうですか? 私もせっかくだからジェシカさんともっと話してみたいですし!」



「ミーシャちゃん! うん、そうしよう! ジン君もそれでいいよね? なら早速行ってくるよ! ミーシャちゃんは可愛いだけじゃなくて賢いなんて、さすがジン君の妹さんだ! 待ち合わせはここでいいよね? それとも迎えに行こうか?」




 ミーシャの提案にジェシカは納得したように即座に行動に移そうとする。

 結局こうなってしまうのか。



 ならせめて1対1で……違うな。

 全員でだから、まだマシか。




「っち、わかったよ。ジェシー、俺たちの方はどれぐらい時間が掛かるかもわかんねぇし、場所が場所だからな。夜の19時にでもここで待ち合わせしよう。待たせるのも悪いし、もしかしたら依頼も断れないかもしれねぇだろ? その時間になっていなかったら、そっちはそっちで行ったって思うからよ」



「うん、19時だね! 心配しないで、しっかり断ってくるから! じゃぁ、3人ともまた後でね!」



 そうしてようやくジェシカは男2人を連れこの場から去って行く。

 男たちも可哀想に「本当に断るのですか!?」「今からでも考え直して欲しいですぞ!」と引き留めるために声を掛けているがそんな事はお構いなしに歩行していく。




「ねぇ、お兄ちゃん?」



「んだよ」



「ジェシカさんって、ちょっと変わった感じの人だったけど、お兄ちゃんには勿体ないぐらい綺麗だし優しそうな人だったけど、どうしてあんなに会いたくないって言ってたの?」



「それは……、まぁ、なんだ。どのみち後で会う事になっちまっただろ? だから今は気にすんな。だけどな」



「だけど?」



「少なくてもしばらくの間は1対1で会うのだけはやめてくれ」



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