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「お兄ちゃん、そんなに慌ててどうしたの? それに明日はアオの事で夕方には行かないといけないんだから、街を離れるわけにはいかないでしょ?」
俺は自分たちの食べた分ぐらいの金銭をテーブルの上に置いて、すぐにでも店を出れるようにアオを揺さ振り起こす。
眠たげなアオは最悪担いで帰ればいいだけではあるのだが、明日の結果を聞かなければ今後アオをどうすればいいのかわからない。
「くっそ、グレイブ! そんな大事なことなんで後回しにしたんだよ!」
「あぁ?せっかく教えてやったのにその態度たぁ、いい度胸じゃねぇか。それに久しぶりなんだろ? 会ってやってもいいんじゃねぇのか?」
「俺はあいつが苦手だって言ってたろうが!」
「そうだったか? そんな昔の事なんて覚えてねぇよ普通なら羨ましがる連中ばかりだろ?」
「ははは、ジェシカさんという方は初めて聞きましたがジン君の愛しの人と言う事は女性の方のようですね~」
「お兄ちゃんって彼女いたの!? そんな話一回も出てこなかったよね! ねぇねぇ、どんな人なの? お母さん達にも報告しなきゃ!」
「そんなんじゃねぇよ! グレイブ、その話いつ聞いたやつだ?」
「俺が昨日にこの街の冒険者組合にいった時に話してる連中がいたんだ。実物は見れなかったが、お前から名前だけは聞いたことあったから喜ぶかと思ったが、そんな態度するこったぁねぇだろ? 話してる連中からすれば随分綺麗な子らしいじゃねぇか」
「って事は、依頼で立ち寄っただけかもしれねぇか……、早かったら今日にでも出て行ってすれ違いになってるかもしれねし、下手に明日とかは冒険者組合の近くに寄らねぇ方がいいのか?」
どうすれば会うことを回避できるだろうか。俺一人で会うだけならまだいいのだが、こいつら。特にミーシャに会って欲しいとは思えない。
「お兄ちゃん! ねぇ! 答えてよ~!」
先程からミーシャは俺の腕を引っ張りながらジェシカとの関係を詳しく聞いてくるし、アオはアオで起こしたが、寝起きのためかフラフラと直立できず服掴んでなんとか立っている。
「あー、もう! あんま引っ張んな! お前は気にしなくたっていいから!」とミーシャに対してだけ言って腕をふりほどく。
「あー、もうそんな風にするんだ! ならもうお母さん達に言っちゃうもんね!」
「だーかーら! そういった関係じゃねぇって言ってんだろうが! いいから今日は帰るぞ!」
「いいのかなー? 私知ってるんだよ? お兄ちゃんが月に一度は女の人のお店に行ってっるって事!」
「……ちょっと待とうか。ん? ミーシャ。それは誰から聞いた?」
俺の時間が少しの間止まった。
そういった店に……って事より、どうして今そんな話になるんだよ。
脅してでも聞きだそうってやつなら、なんとか誤魔化さなければ。
「誰にも聞いてないよ?たまに遅くに一人で出て行く時あったよね? 気になっちゃってどこに行くのかな~って追いかけてるうちにそういったお店がある通りに歩いて行ってたから、やっぱりお兄ちゃんも男の人だな……って。 でも彼女がいたならそれって浮気でしょ? 」
「がははは、こりゃぁいい! ジン、後を付けられてる時点でお前の負けだ!がははは」
こいつ、人ごとだと思ってなに言ってやがる。
「グレイブさんも一緒に行ってる時があったの私知ってますよ~?」
「おう! そりゃぁ、俺も男だからな-! まさかこんな若い子に見られたって思うと少しばかり恥ずかしいなぁ! ジンも諦めて話しやがれ!」
「ははは、お二人とも仕方ない人たちですねー、ははは」
「……ミーシャ? 俺はそんなとこ行ってねぇぞ? あの通りの先に上手い酒屋があるんだ。そこに立ち寄っただけだから? それにジェシカとはそんな関係じゃねぇって言ってんだろ?」
「へ~、なら明日にでもそこに連れてってよ? なんなら今から行く? 私はいいよ?」
「いーやダメだ。あの辺はお前には刺激が強すぎるから。アオもいるんだ、ダメに決まってるだろ」
これ以上話せば、すでに誤魔化し上手く出来ていないのに、グレイブやスズキがジェシカの事を聞き出そうとミーシャに荷担しだしてもおかしくない。そしてグレイブに至っては、もう少し隠しやがれ。
アオを引っ張りつつ早急に店出なければならないが、どうしたものか。
「グレイブ」
「あ? どうした?」
「お前さ、護衛の依頼で追加報酬とか貰ったのか?」
「当たり前だろ? 1等級相当の依頼だし、赤髪の野郎があんまり傷つけずに倒してくれたおかげで、それなりの金額で魔獣の素材も売ることが出来たからな~」
「ってことは結構今持ってるんだよな?」
「あ? 奢って欲しいなら別にいいぞ? 俺からしても素材分は無かった金だしな」
「なら今日の支払いは頼むわ」
良いことを聞いた。俺はそっと出していた金銭を回収して出口に向かう。
「おーい、アリア! グレイブ野郎が、賭博で結構勝ったから奢ってやるとかいってんぞ! しかも結構な金額だ! あの時もういかねぇって言ってたのにだぞー! キツーく叱ってやってくれ!」
少しでも嫌がらせをしようと立ち去り際にアリアに対して、グレイブの事が下手に金持っている事を。
元はグレイブの奴隷だったと聞かされたが、普段を見ていると全くそんな様子はなく、どちらかというといつもグレイブに対して文句だったり説教を行っている姿しか想像できない。
前も酔っ払った勢いで賭博に言って負けたって話を聞かれた時にアリアは仕事中にも関わらずグレイブの事を叱りつけて位ぐらいだ。
「はぁ!? 前にあんなに言ったのにまた行ったのか!」
アリアは別席を片付けていたのに、俺の言葉を聞いた事によって途中で片付ける手を止めてグレイブに怒りの籠もった口調で近寄っていく。
「あ! こら! チビ嘘言ってんじゃねぇぞ! アリア、嘘だって! 行ってねぇ! あれ以来行ってねぇから! 追加報酬で金もってるだけだから! ちくしょう! 覚えてろよ! 」
と後ろの方から聞こえてくるが無視し店の外に出た。
ミーシャは「本当にお母さん達に言っちゃうよ? いいの? 言っちゃうよー?」と脅してくるが、俺からすればミーシャにバレてしまった方がかなり精神的に来ている為、今更書かれたところで、もう無かったかのように過ごすしかねぇ。
ジェシカは悪いやつではない。俺にとっては、だ。
だからこそできる事なら会わせたくないというのが本心なんだ。
そんな事を願いつつ、宿に帰り次の日を迎える。
念のためと思いつつ冒険者組合に立ち寄らず街の中で夕方まで暇を潰しつつ、奴隷商の元に向かう。
向かっている最中に、広場を通る時に僅かに人混みが出来ており「何かやってるのかな? お兄ちゃん見ていこうよ! 時間も少しぐらい大丈夫でしょ?」とミーシャの一声によって、人混みの原因を探るために近寄た事が運の尽き。
早くも昨晩の願いを無下にしてしまう結果に繋がったのだ。




