26.
「よし、こいつで終わりか?」
「ははは、今ので19匹目ですね。報告では20匹ほどでしたし、群れで動く習性もありますので終わりでしょうね~」
「やった~! 今回も無傷だったよ!」
「ミーシャも良くやったな、ついでだしスズキの傷でも治してやりな」
あの後、少し探索する事によってもう1組の群れを見つけることができた。
俺自身は無傷で討伐を行う事が出来たが、スズキが腕を引っかかれたのと、その勢いで地面に体をこすりつけたため、少量ではあるものの傷がいくつかついている。
「ははは、これぐらい大丈夫ですよ~」
「いえいえ! 遠慮しないでください!」
「ははは、いえいえ、自分で直しますよ~」
「回復魔法の練習もしときたいです!」
「ははは、近いですね~……はははははは」
ミーシャはスズキに回復魔法をかけるために近づくが、近寄った距離と同じ距離をスズキは後ずさりをする。
スズキが自身で回復魔法を使えることも知っているが、ちょっとしたことでも経験を積むことによって何か変わるのが魔法だと思っているので、ミーシャに頼んだんだが……。
「スズキもいいかげんミーシャには慣れろって……お前からしたらまだまだ子供だろ?」
「ははは、ジン君。仮にグレイブさんに一晩中抱きつかせろって言われたら嫌じゃないですか? そういう事ですよ~、ミーシャさんも申し訳ないのですが~」
「たとえが全然違う気がするんだが……」
「大丈夫です! 痛くしませんから!」
「ははは、そういった問題じゃないんですよ~、ほい」
「あぁ~! 自分で回復魔法かけちゃった! もー!」
そんなやりとりをしながら村に戻る。
スズキにとって苦手な事は仕方ないかもしれないが、最近は徐々に性癖がひん曲がってきているってグレイブがいっていた。
俺もミーシャには内緒でグレイブと一緒に寄るの街に繰り出す事もあり、もちろん男だからという理由でスズキの事を誘わないのかと聞いた事がある。
そしたら「あぁ、あいつはなぁ~、言っていいのかぁ?」
と意味ありげな回答が帰ってきたので、興味本位で続きを聞くと
「嬢ちゃんに対してはできる限り邪険してないようにしてるが、女嫌いが限界に達したのか男同士の店に行くようになったんだよなぁ……」
グレイブからは、そんな事ありえるのかっというような悲しそうな目をしていたのを思い出せる。
ミーシャを邪険にしていない理由も俺の仲間、ましてや妹だからといった理由だかららしい。
それでも時折本気で嫌そうな顔をしているが。
「はぁ~、まぁいいか。報酬は山分けとして、村に戻ったらどうする?」
「私はもう1日ぐらいはゆっくりしたいかな~?」
「ははは、自分は明日の朝一にでも戻ろうとしますかね~」
「なら明日で一旦解散だな、そのままどこかにいくのか?」
「ははは、いえいえ、一旦街に帰るだけですよ~そろそろ宿代も払わないといけないですしね~」
「別に急ぎじゃないんでしたら一緒にもう1日いたらどうですか~?」
「ははは、お許しください。ははは~」
村に着くときにはすでに日は落ちていたので、報告だけ済まして宿に戻る。
3人で同じ食事を取りながら、部屋は俺とミーシャ、別でスズキの部屋といった風に別れている。
「どうだ? 慣れてきたか?」
二人きりの部屋の中でお互い別のベットの上に座ったり、寝転んだりしながら話をする。
「うん! やっぱり楽しいよね!」
「まぁ、そうだな~。毎日いろんな発見があるってのも面白いよな」
「うん! 外にでるとやっぱりハラハラしちゃうけど、それでも私は楽しいよ? お兄ちゃんんはどう?」
「俺もだな。でも、俺なんて最初はもっと苦労したんだから、お前もその苦労を味わえって思ってんだけどな~」
「ひど~ぃ! お兄ちゃんが最初は一人だったってのは聞いたけど、私の場合は最初からお兄ちゃんがいたもんね! 利用できるものはなんでも利用しないと!」
「人を利用するなんて言うなよ……いいけどさぁ」
冒険者になって1年ぐらいは必死に毎日を生きていたからな。
依頼は採取だったり、安いが自分にとっても問題ない難易度の魔獣討伐。
日銭を必死に稼ぐってのが大変だった。
効率を良くする方法なんて分かっていなかったことと、やってみないとわからないって事もあったせいで、自分の実力も正直わからなかったし、受けたはいいが、討伐できないから帰ってきたら依頼料を取られて終わってしまうってのも何度もあった。
冒険者を指導するって仕事をしているやつらもいるが、それも決して安くない。
だから、グレイブに合うまではかなり苦労したんだがな。
「明日1日残ったところで何かしたいことでもあるのか?」
「ん~、特にないかな~。それでもせっかくだからゆっくりしたくない?」
「ミーシャがそうしたいってんならそうするか。あんまり無駄遣いはすんなよ?」
「は~い! その後はどうしようか?」
「俺たちも一旦街に戻るか。今日見た感じじゃめぼしい依頼もなかったしな」




