23.
「ぇ~、1回ぐらいは行ってみたのに~」
賭博に行くと誤解してくれたようで助かった。
「せっかくだしどうだ? 近いうちに4人で依頼でも受けてみるか?」
「ははは、それはいいですね~」
「3等級の依頼なんて、4人で報酬分けると、そこまで稼げないぞ?」
「ぁー、まぁそうだが、依頼次第だろ! 少し安かろうが、お前の成長も見てみたいな!」
「そりゃ、1年も会ってなかったんだから別れた時に比べりゃな。そろそろこいつにも3等級依頼を1度経験させて起きたいとは思ってたし、何かあってもスズキやおっさんがいたほうがこっちとしても安心できるし」
「ははは、私なんてあんまりですよ?」
「なんで俺の名前が後なんだ? 普通、この2等級の俺がいるから安心だってとこだろ?」
「おっさんなんてどうせ力任せだろ? 逃げるってなったら明らかにおっさん見捨てた方がいいし」
「こらチビ……よくもいったな!」
怒っているわけでなく、ニコニコと笑いながら頭を掴もうとしてくる。
その手を軽く躱す。
それでも「この野郎!」とゆっくりと何度も同じ事を繰り返す。
なんとも懐かしいやりとりだろうか。
単純な力や技術ならグレイブの方が優れている、経験も豊富だ。
ただし、速度に頼るような、相手が逃げ回るようなら体格ゆえか、追いつくことが難しい。
本人もそれを分かっているようで、依頼を受ける際も、最初から逃げるような魔獣の依頼は受けないようにしていた。
「あははは、本当に仲良しなんですね! 久しぶりにお兄ちゃんが楽しそうにしてて嬉しいです!」
「ぉ、嬢ちゃんもこんな生意気で意地っ張りなやつと旅なんて大変だったろ!」
グレイブは俺を捕まえる事が出来なかったか、代わりにミーシャの頭をガシガシと撫でる。
「頭なんて久しぶりに撫でられました!」
それをミーシャは嬉しそうに受け入れる。
「嬢ちゃんもそんなかしこまった話方しなくていいんだぜ? 俺たちは冒険者だ! 確かに年齢や等級ってのはあるがなー、同じ仲間ならもっと楽に話せばいいぞ?」
「でも、スズキさんは丁寧に話されてますよね?」
「ははは、私にも改まった話方じゃなくていいですよ? 私はこっちの方が自然なだけなので」
「初めてスズキに会った時もそうだったから、スズキはスズキって事だ、おっさんが良いって言ってんだから気にすんなって」
「ちなみに、こいつは俺の事をおっさんだといってるが、俺はまだ30そこそこだぜ? せいぜいお兄さんだろ?」
「ぁあ? おっさんの見た目でお兄さんってのがありえねぇだろ?」
「ははは、私はグレイブさんより少し若いぐらいですよー」
「おいスズキ! お前会った時は同い年だっていってたろ!」
「ははは、あの時は会わせて置いた方が良いかなと思いまして……」
……
あれから遅くまで店の中で話をし、酒を飲んでいた。
といっても、途中からグレイブ以外はアルコールだけでなく、果汁100%だったり少し薄めた飲み物、水を飲んでいたので閉店の時間になるとすぐに出ることが出来た。
「ぐがぁあああ……ぐぅぅう……」
「おいおっさん! 起きろってんだ!」
グレイブにいたっては、1人で酒を飲み続けて、途中から机に頭をつけて眠ってしまった。
何度か起こしてみても動く気配すらなく、結局閉店の時間まで全員でいる。
他にいた多くの客も殆ど帰っており、あと数人いるってぐらい。
「はぁ~。やっぱり今日も寝やがったか……」
アリアと呼ばれる店員が退店を促すために近くに寄ってくる。
「ははは、ほんといつも通りですね~」
「スズキ!あんたもしっかり言ってくれよ! こっちだって良い迷惑なんだからな!」
「グレイブさんっていつも寝ちゃってるんですか?」
「あぁ! うちに来ると殆ど最後までいやがって、特に誰かと一緒にいる時なんて、そいつのことほったらかしにして眠ってやがる! 寝る客はいるが、毎度毎度のやつなんてこいつぐらいだ!」
「おいおっさん! 起きろって! 俺らも怒られてるみたいじゃねぇか!」
いくら体を揺らそうが、耳元で声を出そうが気持ちよさそうに眠り、反射的に返事は返してくるモノの、起きる気配はない。
「ははは、さすがに私も眠たくなってきましたね~。ジン君、ミーシャさん、いきましょうか~」
「グレイブさんほったらかしでいいんですか?」
「ははは、どうでしょうね~」
「おいおい……まぁいいか、ミーシャ、いくぞ?」
「えぇ!お兄ちゃんまで!?」
アリアと呼ばれる店員は、本当に毎度の事なのだろうか、グレイブの財布を勝手にあさり、本日の食事代を取ってしまう。
スズキはそのことを一切気にしない様子ではあったが、俺とミーシャは自分の食事代ぐらいは出さなくてはと思った所「あんたらの分もこいつから貰っとくから!」と言われ、グレイブの知らない間に奢って貰うことになった。
一度は止めたが「あんた、随分前にこいつに『先輩だから奢ってやろうか』って言われてたんだろ?、なら奢って貰っとけよ」と制止された。
結局、2人で店に入り、4人で食事を行い、3人で出て行くといった、なんとも一貫性のない人数構成なのだろうか。
「ははは、本日はありがとうございました。私はこっちですので」
「ぁ! スズキさん、今日はありがとうございました!」
「─いえいえ、こちらこそありがとうございました。ジン君もまた会いましょう。先程いった通り、グレイブさんに関しては、毎晩のようにあの店にいますし、私も3日に1度ぐらいは利用してますので」
「あぁ、スズキも気をつけろよ? お前だって4等級になったんだし、無理して討伐依頼ばっかすんなよ?」
店を出て少しの間、共に歩いたが、宿の方向が違ったのですぐに別れてしまう。
懐かしくもあったが、今後の食事の際に、あの店を使えば2人に会うことが簡単にできるって事と、いま泊まっている宿も教えて貰ったので、会いに行こうと思えばあえる。
冒険者組合にいけば鉢合わせる事もあるだろう。
「ん~……なんでだろう?」
スズキと別れて、こちらも宿を向かっている最中にミーシャは不思議そうに頭を抱えるように悩んでいた。
「ん? なんかあったのか?」
「勘違いかも知れないんだけどね? 今日、スズキさん、あんまり目を合わせてくれなかったんだよ? どうしてかな? 初対面だったからかな?」
なんだ、そんな事か。
「あぁ、そのことか。スズキはな、昔に色々あって女の事が苦手になったんだってさ。だからミーシャの事も警戒してたんじゃねぇかな?」
具体的には前の世界で。
内容は忘れたが、そんな事で?って思った事は微かに思い出した。
また会った時にでも一度聞いてみるのもありかな。




