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俺の入学した学校は実業高校でした。  作者: Ho鷹
新しく始まる俺の高校生活
7/8

俺と黒瀬のランチタイム

その声の主が瑠璃ならそんなことも言いそうなのだがその声は違う人物のものだった。

それは黒瀬の声だった。

そして、俺は黒瀬を見て化け物でもみたかのように固まる。


黒瀬はニコニコしながらおそらく初めて話すであろう数人の女子に話しかけていた。

それだけならまだありえる光景なのだが、そこには恐怖すら覚えるものがある。

それは、黒瀬の顔だ。

声は明るいのに笑ってない。…というか笑えていないという方が正しいのか。

俺と同じで普段人とあまり話さない黒瀬はきっと上手く笑顔を作ることが出来ないのだろう。


そして、話しかけられた数人の女子もはじめは黒瀬に話しかけられたことに驚きの表情を表し、黒瀬の笑顔とは言えないひきつった顔をみて固まる。


しかし自分の今の顔を知らない黒瀬は言葉を続ける。


「ねぇ、一緒にお弁当食べない?」(笑顔)


たが、固まっている女子たちの反応は薄い。


「ええと…いい一緒に?…」


女子たちが口を開いたかと思えばすぐに黒瀬が言葉を返す。


「そう!一緒に!!」(笑顔)


そのすばやい返しに女子たちは追い込まれていく。


「えっとー…ごめんね、今日は他のクラスの子達と食べる約束してるんだー…」


どうやらやんわり断られてしまったようだ。

その女子たちは一目散に教室から出ていった。

そして、女子たちが座っていたところにぽつんと一人黒瀬が残されていた。


それを見ていられなくなり俺は黒瀬から目を逸らす。

一体黒瀬はなんのキャラを試しているんだ…

コミュ力高い系キャラか?見てる限り全然高くないけど。それとも病み系キャラか?早く病院連れてってやらないと…とか考えながら黒瀬の方を再び見る。


すると黒瀬はまたもや他の女子たちのところに話しかけに行っていた。

が、先程と同じく断られていた。そしてその女子たちも適当な理由をつけて教室から出ていった。


さすがに黒瀬も諦めると思ったがなんとまた黒瀬は違う女子たちのところへ…

その痛々しい様子を見ていられなくなり俺は再び目を逸らす。そして弁当を食べ始める。


しかし、目を逸らすことができても耳には入ってくるものである。黒瀬の声が耳に入ってくる。


「わたしと一緒にたっべよぉ~!!」「ねぇねぇゆかりと一緒におしゃべりしよぉ!」「ねぇ、一緒に食べてくれないとぉ~、わたしがぁあなたたちを食べちゃうぞぉ?」


…とか次から次へと黒瀬が声をかけまくっているようだ。女子だけではなく男子まで。

てか、最後のだけ他のとジャンル違うだろ!

そのセリフどこで覚えたのん?そんな言葉言ったら経営科の数少ない男子が興奮しちゃうでしょ?ね?

そんなことを考えていたら急に黒瀬の声が止み静かになった。

さすがの黒瀬も到頭諦めたかと思い俺は箸を置く。

そして振り返る。

すると黒瀬と目があった。…というか黒瀬しかいなかったため必然的に目があった。黒瀬はクラス全員に声をかけ、その結果みんな教室から出ていってしまったらしい。

てか、みんなアウトドアすぎるでしょ?なに?教室から出ないと息できないの?って言ってる俺はインドアすぎるのか…というかひきこもりか…


そして教室は昼休みというのにシーンと静まり返る。

かすかに聞こえてくるのは近くの教室からの声だけ。


黒瀬はこちらを見たまま俺に近づいてくる。

仕方ねぇ、俺が一緒に食ってやるかーと俺は心のなかで思う。…思ったのだが、


「あ、あなた仕方ないからわたしが一緒に食べてあげるわ!」


「一緒に食べるのはいい。だけどお前、どの口がいってんだよ」

なにいきたりツンデレ挟んできてるんだよ!てか、デレてないし可愛くないわ!


「だから、わたしが一緒に食べてあげると言っているのよ!」

そして、黒瀬は俺の横の席に腰を下ろしお弁当を机の上に広げる。


「いやいやいやいや、お前、俺にだけ態度違うくない?さっきのキャラどこいった?」


「当然よ。そしてさっきのキャラはもう終わりよ」


「当然てなんだよ!当然て!てか、さっきのキャラなんなの?」


「きゃぴるんニコニコキャラよ」

黒瀬はドヤッとした顔で言う。


「どこでそんなキャラ知ったんだよ!

というか、きゃぴるんしてなかったよ!浮かれるっていうより浮いてたからな!それにどこがニコニコなんだよ!マジ怖かったぞあの顔!」


「自分でキャラは考えたわ。えっ?ニコニコしてなかったって?」


「その発想が一番怖いわ!」


「めっちゃ顔ひきつってたぞ」


「そう…だったのね」


「このキャラはわたしには合っていなかったということね」


「いや、そんな簡単に片付けられることなのかよ!」


「…あ、あなたのも酷かったわよ!賢くもないのに賢いキャラだなんて」


「うぅ…るっせー…」


「ということで、一日目はあなたもわたしもいい結果は出せなかったわね…」


「そうだな…」


俺の相づちと同時に昼休み終了10分前の予鈴がなる。


「もうすぐ昼休みも終わるし、早く食っちまおうぜ」


「そうね」


そうして俺たちは急いで昼飯を食べた。

そして、弁当箱を片付けているとき黒瀬がポツリと呟いた。


「一緒に食べてくれてありがとう」

素直な言葉。そしてさっきとは違い、ひきつっていない可憐な笑顔。そう言って黒瀬は自分の席へ戻る。


昨日の作戦会議とは違い今日は内容はあれだが、会話がいくらかあった気がする。


そして、耳には黒瀬の声の余韻が残り、目には笑顔が焼き付いていた。



なんだ、普通にしてれば上手く笑えるじゃん。









日曜日ギリギリ投稿!

次回は水曜日or木曜日です!

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