俺はまさかの間違えをする
俺と瑠璃は昇降口に着き、それぞれクラス表を確認していた。
「えーっと、俺は…2ー4か」
俺は1人でそう呟く。
俺が自分のクラス表を確認し終えたころ、ちょうど瑠璃も終わったらしく俺の方に人混みを避けながら歩いてきた。
「蓮ちゃん、あった?」
「いや、ないとだめでしょ」
「そうだけどさ、蓮ちゃん影薄いじゃん、だから書き忘れられてることもあるしさ」
「影が薄いのは認めるがさすがにそれはねぇーよ」
たしかに俺は影が薄い。
小学6年の修学旅行の部屋割り発表のとき、先生が男子の部屋割りを順に言っていくのだが、俺だけ言われずに忘れられることがあったり、俺が先生のうしろに普通に突っ立っていると「真那加がいない」と騒ぎになったことも度々ある。
というか、先生ひどくない!?…と俺が悲しい思い出を振り返っているといつの間にか瑠璃は靴を履き替え、階段付近で俺を待っていた。
「蓮ちゃん早く~」
「あぁ悪い、ちょっと待ってくれ」
俺は急いで靴を履き替え瑠璃に追い付き、二人で階段を上る。
俺たち2年のクラスは二階にあり、さほど遠くないのに今日は何故かとても階段が長く感じる。
もうこれ無限階段なんじゃないの?と思うくらいだ。
おそらく、体が拒否しているのだろう。
「教室に向かうな」と。
ならばすぐに引き返したいのだが瑠璃は止まってくれないのでついていくしかない…
「蓮ちゃん、クラスに馴染めるといいね~」
瑠璃が唐突に言う。
「まぁ、影が薄いから何処にいるかわからないくらい馴染めるさ」
「それだめじゃん!」
「影が薄いと誰かに迷惑かけることもないから、いいだろ?」
「えぇ~、けど私いっつも迷惑かけられてる気がするんだけどな~」
「えっとー…る、瑠璃はいいんだよ」
「なんか嬉しいような、嬉しくないような感じ」
と、言いつつも瑠璃はニコッと嬉しそうに明るい笑顔をみせる。
それをみて俺は「これからも瑠璃には迷惑をかけよう!」と決意した。
瑠璃と話しているうちに気づけば階段を上りきっていた。
「んじゃ、また帰りにね~」
「おう」
俺は瑠璃に短い返事を返し、瑠璃と別れる。
瑠璃は3組、俺は4組と番号的には隣なのだが教室は階段を挟んで左が3組、右が4組となっている。
そして、階段右側の教室の扉の前で俺は立ち止まる。
「すぅーはぁ~…」
俺はため息にも近いような深呼吸をして扉を開けた。
ガラガラガラと開かれたその中には何人かの女子生徒がいた。
いるだけならいいのだが、みんながみんな揃ってこちらを見ている。
体が恥ずかしさで固まるのをなんとかこらえ、俺は床を見ながらまるでロボットのような歩き方で自分の席まで向かう。
そして席に着くとドサッと鞄を置き、さっきとは打って変わり柔らかい体使いで机に突っ伏す。
そしてゆっくりと目を瞑る。
俺はこうなるともう怖いものなしなのだ。
周りからの情報をシャットアウトし、自分の世界に入ることができるからだ。
今日学校に来てやっと落ち着けるひととき。
しかし、それはものの10分で消え去るのであった…
「そこは私の席なのだけれど…」
何処からか透き通るような女の子の声が聞こえてくる。
(あー、これはきっと夢だ。昨日みたアニメの影響だろうなー)
「あの、聞こえてるの?」
(あれ?これ夢なのか?いや、さすがに瑠璃以外の女の子と俺が話す機会なんて空から女の子が降ってくるか、俺の黒歴史ノートをもって彼氏になってくれないとこれをばらまくと脅される以外ありえない。だとすればこれはゆm)
「あの、起きてるの?」
その瞬間俺は考えることをやめた。
優しくとも、とても真っ直ぐな声がおれの耳元で囁いたのだ。
それと同時に女の子独特の甘い香りが俺の周りを覆った。
バンっと机を叩きながら俺は体を起こした。
すると、すぐ近くにその声の主であろう女の子が。その距離20センチ。
俺はまださっきの声の余韻が耳に残ったまま何も考えられずその子を見ていた。
その子は音もたてずに俺から少し離れる。
すると、ぼやけた目が段々と戻っていき、その子がはっきりと見えはじめた。
目はぱっちりとしていて髪は青みがかった黒髪で腰あたりまで伸びるロングヘア。
外からの光を受けてより一層艶やかさを増している。
また、制服は実にきちんと着こなされ、スカートは長すぎず短すぎずの絶妙な長さで清楚感が強調され、膝上まであるニーハイソックスは長い足にぴったりで、もし制服が似合う女の子グランプリに参加すれば優勝間違いなしの可憐で端麗なルックスである。
まさに、超絶美少女!世界三大美女と言われているクレオパトラもびっくりだね!…と1人妄想を膨らませていると彼女が口を開いた。
「あの…」
「ひゃっ、ひゃい!」
心拍数が急に上昇し、何も考えられない状態で声を出せばこうもなる。それに俺は人とコミュニケーションをとることが苦手だ。
教室中の視線が一斉に注がれるのを感じた。
だがそんなことはお構いなしに彼女は続ける。
「邪魔だからそこどいてくれるかしら?あなたみたいな人に座られるととても不愉快なのだけれど…」
とても刺々しい言葉が俺に刺さる。
もうこの時には彼女の優しい声の余韻、胸の高鳴りは桜の花とともに何処かに飛んでいってしまった。
そして俺は少し腹立ちながらも席から離れる。
たしかに、彼女の言っていることは正しい。
知らない男子が自分の席で寝ていれば誰だって嫌である。俺だって嫌だ。
だけど…俺は腹から出そうな言葉を抑え、なんとか謝罪の言葉を絞り出した。
「ごめん」
そして俺は本当の自分の席をみつけ、また突っ伏してゆっくりと目を瞑った。
(超絶美少女なんていなかった!俺はみてない!幻想だ、幻覚だ…。席さえ間違えてなければ…)
俺は予鈴がなるとともに大きな大きなため息を吐いた…
読んでいただき、ありがとうございます!
Ho鷹です。前回1話を投稿し、いきなりブックマーク登録があったので驚きました!ありがとうございます。
今回は1話よりも文字数を増やしてみました。
次回も水曜日or木曜日に投稿したいと思っています。