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ヤンデレっ娘の飼育がかり  作者: ゆうゆう遥か
2/5

異変

2話目です。

先輩の様子がおかしい?

四限目の授業は、現代文。

眠くなるような先生の朗読を、生徒達は気怠そうに聞いている。

僕はその中で一人奮闘していた。

授業そっちのけで、部員募集のポスターを作成中である。

「では、双葉そうば

よし、もう少しで完成‥‥

「聞こえんのか双葉そうば‼︎」

教室に響き渡る先生の怒号。

伏せていた顔を上げた時にはもう遅かった。

運の悪い事に先程の石頭先生が目の前に立っており、

「ここを読めと言ったのですが」と

冷たい表情で見下ろしている。

僕は有無を言わさず廊下に突き出されてしまった。

「すみません‥‥トイレ宜しいですか」と少女が挙手する。

授業が終わるまで寒い廊下で欠伸をしながら

やり過ごしそうとしていると、

扉を開ける音と共に少女が出て来た。

目が合う二人。

それは工藤美代くどうみよで、彼女は目線をぱっと逸らしたが

何か言いた気に、こちらに近付いてくる。

どんどん距離を詰められ、端整で美しい顔がすぐ目と鼻の先に。

ち‥‥近い近い!

思わず声が出そうになった時、チャイムの音が授業終了を告げた。

ざわつく教室内を視界の端に入れた彼女は、僕から離れる。

そして、逃げるように喧騒の中へ戻っていった。

心臓がドキドキしてまだ動けそうにない僕の背後から肩を叩く者が。

工藤くどうさんかと期待を込めて振り向くと、男子生徒が立っていた。

誰、コイツ

「ちゃお、さっきはえらい怒鳴られてたなぁ」そうニコニコしながら

僕に話しかける。

関西弁らしき言葉遣いが妙に鼻にかかるが、初対面の相手に気にする事では

ないし

クラスに一人はいるであろう馴れ馴れしいタイプだ。

「ところで、熱心に何してはったん?」

僕は事情を話した。

途中でシラけるのがオチだと思っていたが、意外にも乗り気で

「そうなんや、後で詳しく聞かせてや」と食いついて来た。

僕らは昼食を一緒にとり、互いの自己紹介や部活の事を話した。

彼の名前は不知火央しらぬいおう。皆からはoオーと呼ばれているらしい。

身長は僕より少し高め。現在野球部に所属しているが

練習がハードな上に天性の運動オンチで入部早々退部を考えているそうだ。

不知火しらぬいよ何故、運動部に入った

「それに髪を切れって先輩が言うんや。俺っち丸坊主は勘弁」

肩まで伸びる金髪を大事そうに撫でる不知火しらぬい

いやほんとに何で入った

内心ツッコミ所満載だが、折角の勧誘出来るチャンス

黙って聞き役に徹する。

「ほんで、どんな部活にしようと思てるん?」

僕の作成した部員募集ポスターを見ながら尋ねる。

ここで本題に入る。

「(案は一応あるけど)不知火しらぬいが入部してくれるなら、

君の好きな活動内容で良いよ」

そう言うと驚きに目を輝かせる彼。

ほんまにーーーと叫ぶ彼に、真似て

ほんまにと頷く。

部員一名決定

クラスメイト達から注目を浴びながら、

僕らは固い握手を交すのだった。

握手すると、予想より小柄な手と握力の無さに驚いたが柔らかな手だ。


放課後、僕らは校舎の裏にある古びた物置小屋に来ていた。

彼によれば今日は野球部が運良く休みらしい。

扉を開けると埃がもうもうと立ち込める。

大和やまとっち、まさか此処‥‥」

咳込みながら尋ねる不知火しらぬいに微笑みかける。

そのまさかだ。

「本日から此処が部活場だ!!」

活動場所を探していたが、どこも既に生徒達で占拠されており此処だけが貸し切りとなって

いた。

長い間、誰も使用していないようで埃だらけだが、辺りを見渡すと置かれている物品が少なく

広いので掃除すれば案外と快適かも知れない。

ブーイングしている不知火しらぬいを尻目に早速掃除に取り掛かる僕。

空気の入れ換えの為、窓を開けると校庭が見える。

ん、誰かが校庭の真ん中から手を振っている?

よく見ると僕の恩人の先輩ではないか。

何を思ったか物置小屋に向けて、ツインテールを揺らしながら走って来る。

あっという間に、こちらに到着して息を切らしている彼女。

「‥‥どうしたんですか?」

先輩は僕と喋ろうと、窓越しに寄り精一杯背伸びする。

「此処で部活するつもりかな。もぅ、やっと見つけたよ〜。さっきから君を、

あちこち探してたんだよ」

突然、胸倉をグイッと掴まれ、

「君のクラスにいる工藤美四くどうみよちゃん、部員にしてあげなさい。」

至近距離でそう言う先輩の目は、何故か怖かった。

華奢な彼女のどこから力が出たのか強く掴まれ、動けない。

暫しの沈黙が二人の間に流れる。

「なぁ〜さっきから誰と話しとるんや?」

陽気に近付いてくる不知火しらぬい

先輩は一瞬力を緩め手を離すと思いきや、更に顔を近付け

肌に唇が触れる。

柔らかく啄むように触れ、音を残して離れる唇。

「‥‥きゃ」

直後、どたん。

体勢が崩れた先輩は尻もちをついてしまった。

状況が飲み込めず呆然とする僕と反対に不知火しらぬい

先輩を心配し窓辺に近寄る。

反射的にキスされた頬を手で隠すが、彼は何も気にする素振りは

無い。

もしかして見られていないのかも知れないと少し安堵する。

立ち上がりスカートの汚れを払い、照れ笑いしている先輩。

「それだけ言いに来ただけなの。じゃあねッ」

最後にそう言って去って行った。

「あの人、確か学校の生徒会長やないか‥‥?ごっつ可愛いのう」

ニヤけながら先輩の後ろ姿を見送る不知火しらぬい

考え込む僕。

先輩と工藤くどうさんは何か繋がりがあるのだろうか。

それに先輩のあの目とキスの意味は‥‥?

時計を指差して「もう掃除は明日にして、

一緒に帰ろうや大和やまとっちー」と急かす不知火しらぬい

の声に我に返る。

「うん、帰ろうか!」

明日から楽しい部活を始める事が出来るのか僕は一抹の不安を感じて

いた。


物陰に隠れ、物置小屋から立ち去る二人を見ている先輩。

「あのぐらいしないとね美四みよも」

そう呟きペロリと唇を舐めた。





















































振り返ってみると、主人公1日の間に色々あり過ぎ(笑)

ってなります。次回も宜しければお会いしましょう。


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