【第13視】俺たちのプライバシー
翌日の文芸部室。
例によって、部室には俺と標智憂梨の二人きり。
「なあ、標さん」
「智憂梨」
「――そうだった。智憂梨」
「なに?」
「昨日、結束……、星月と尖先輩と、映画見たあとどうしたの?」
「別に。少しお茶して解散したわ」
「そう」
「そっちは?」
「まあ……、ゲーセン行って……お茶して……、同じようなもんか」
「楽しかった?」
「うん、まあ……、楽しかったけど……」
「良かったわね」
「そっちだって、楽しかっただろ。イケメンの尖先輩と一緒でさ」
「そうでもないわ」
「え、そうなの?」
「だって、尖先輩の頭上に、私の名前も星月の名前もないんだもの。なんでこの人、私といるんだろうって思いながら一緒にいたから」
「まあ別に、君たち二人に限らず、誰の名前もなくて『0』表示なんだろ? なんで一緒にいるんだろうっていってもそれは……、智憂梨が付き合おうって先輩に言ったからじゃないか」
「だからって……、男の人は女の方から寄ってくれば誰でもいいわけ?」
「う、それは……」
違うと言いかけて、俺は我が身を振り返った。
俺の場合も……、芦生麗のほうから近づいてくるのを、正直憎からず思っているわけだし……。
そうだ、今は智憂梨と二人だけなんだし、聞いてみようかな。
「あのさ、智憂梨」
「なに?」
「その……、芦生さんの……、麗の頭の上にあるのって、誰の名前なのかな?」
俺は校内でいまだに、芦生麗の名前を頭にのせたやつを見たことがない。
のせていれば、そいつが芦生麗が想っている相手なのだが、俺にはいまだに発見できていないのだ。
でも、標智憂梨の能力なら、芦生麗の頭上には、芦生麗が誰を好きなのか名前が出るのだから一発でそれを知ることができる。
「それはプライバシーの侵害だから教えられないわ」
「そうかよ……」
「あと……」
「ん?」
「もし仮に……、仮にだけど。私や星月の名前を、あなたが誰かの頭上に見つけたとしても、それを口外しないと約束してくれないかしら?」
俺は、智憂梨や星月が好きになった男子を知りうる立場にいる。
今のところ、どの男子の頭上にも二人の名前は見つけられていないが、もし、見つければ、そいつは、智憂梨もしく星月から想われているやつってことだ。
智憂梨も星月も、男の俺にそんなことを見抜かれていい気はしまい。
もし見つけても黙っているとしよう。
「あ、ああ、そうか、いいよ。プライバシーの侵害って、やつだもんな。誰にも……、智憂梨と星月にも言わないって約束するよ」
「ありがと。信用するわ。能力者同士として」
「能力者同士か。智憂梨がそんなこと言うなんて珍しいな」
「せっかく約束してくれたけど、たぶん、あなたが私や星月の名前を誰かの頭上に見ることはないと思うわ」
「へ? そうなの? なん――」
「鈍い透には一生分からないでしょうね」
「また、鈍いやつ扱いかよ」




