第8話 別にデートじゃないし
週末が終わり、平日が戻ってくる。
昼休み。リンは、いつもの四人組で教室の机をくっつけてお昼ご飯を食べていた。
「この後古典とかまじ眠くなる~」
向かいに座るひなたは足をバタバタさせながら文句を言っていた。
「でもあんた、古典の成績やばいんだから寝たら後悔するよ?」
「リン……わかってるって~お母さんじゃないんだからぁ…」
「そういえばさ、リンちゃん!」
私の斜め前に座る美桜が笑顔で声をかける。
「ん?何?美桜」
「この前の週末、栗原君とプラネタリウム行ってたよね~楽しかったぁ?」
「え…。」
思わず動きが止まる。なぜ知っている?誘われた時も近くにいなかったし。
それを聞いたひなたは光の速さで反応する。
「え!なになに!なにそれ!超面白い話じゃん!!!!リン!聞いてない!!」
鈴も興味ありげに隣から声をかけてくる。
「リン。栗原君とデートしたの?」
最悪の展開。絶対勘違いされる。弁解しなくては。
「べ、別にデートじゃないって。てかなんで美桜は知ってんだよ。」
「んーと…たまたまお母さんと一緒に週末お買い物してたら、栗原君が駅の前で待っててね、お友達と遊ぶのかな~って思ったらリンちゃんが来てさ、二人でプラネタリウムのほう行ったし、デートの邪魔しちゃ悪いかな~って」
「見られてたのかよ……」
ひなたは美桜の方から勢いよく私の方へ振り向く。
「ね!ね!どうだった!進展あったの!?デートだなんて聞いてないって!!」
「いやだからデートじゃな……」
「二人でプラネタリウムでしょ!!それ立派なっていうか、ベタすぎるデートだって!!」
ひなたは食い気味に、そして興奮気味に熱弁。
「それで?リン。栗原君とのデートは楽しかったのかしら?」
「鈴…だからデートじゃないよ……まぁ悪くなかったけど…。」
「えーーー!!いいな!いいな!そのあとは?ごはんとか行ったりしなかったの?」
(ひなたの奴…やけに上機嫌だな……)
「カフェに行った。」
「カフェ!?いいじゃん!おしゃれ!!どんな話したの!?」
「別に……星がきれいだったとか」
「いやいや……なんかもっとこう……あるじゃん胸キュンな話!!」
「無い。」
「えーーー……なんだぁ…」
ひなたは大げさに落ち込む。
「でもねリンちゃんっ。栗原君すっごく緊張してるみたいだったよ?」
「美桜……なんでわかるんだよ。」
「だってね、栗原君見かけたとき、そわそわして何回も腕時計確認してたもん。」
「なるほどな。リンに一刻も早く会いたいということか。栗原君も乙女なものだな。」
「鈴……急に変なこと言うなよ。」
「鈴、それ正解だよ!!!栗原君は時間何回も確認するぐらい、緊張して楽しみだったってことだよ!!!そうだよね!リン?」
身を乗り出してひなたは私に顔を近づける。
「知らん。」
「もぉ~照れなくていいじゃん!」
「照れてない。」
でもなんか顔が熱い。なぜだろう。
すると、鈴が真剣な顔で私に質問を投げかける。
「じゃあさ……リンはどうなの?」
「どうって何が?」
「栗原君のこと。どう思ってるの?」
「……うーん優しい。」
「優しい?」
「うん。教え方とか優しいし、昨日もなんか気遣いとか感じた。初めてでもあんま緊張しないんだよね。落ち着くっていうか。」
しまったと思った。つい口を滑らせすぎた。
案の定、目の前のひなたはうざいくらいににんまりしている。
「むっふっふぅ~それってさぁ?むふふ~?」
「なっ……ち、違うからな?そういう意味じゃなくて……」
「そういう意味だって!!!!ほぼ!!いや絶対!!!!!」
「そんなことないって……」
「あるある!!!!」
ひなたははしゃぎ、美桜はにっこりしている。鈴は『おやおや』といった顔で俯瞰している。
「じゃあさ、なんで栗原君がリンを誘ったんだろうね?」
鈴がふと疑問を口にした。
「確かに。クラスに他にも女子いるのに」
美桜も首をかしげる。
「リンちゃん、何か聞いた?」
「…授業中、窓の外見てるから、空好きかなって思ったって」
「え?」
「プラネタリウムなら喜ぶかなって…」
三人が同時に固まった。
そして。
「それ、完全にリンのこと見てるじゃん!」
ひなたが叫ぶ。
「授業中に窓の外見てるって、それ、栗原くんがリンをよく見てるってことだよね!?」
「し、知らん!」
「しかも、空好きかなって気遣うなんて、めっちゃ優しい!」
「そうだね。栗原くん、リンのことよく見てるんだね」
鈴が優しく微笑む。
「リンちゃん、狙われてるかもね〜」
美桜がからかうように言う。
「な、なにそれ…」
心臓が変な音を立てている。
「で、リンはまた行きたいと思った?」
ひなたからの質問。
また行きたいか。
あの星空。あの笑顔。一緒にいて落ち着く感じ。
「…まあ、別に嫌じゃなかったし」
小声でそう言うと、
「きゃああああ! リンがデートOKした!」
ひなたが大騒ぎし始めた。
「違う! デートじゃない!」
「でもまた行きたいんでしょ!」
「それは…」
否定できなかった。
私の様子を見て、三人はにこにこ笑っている。
「リン、顔赤いよ」
「赤くない!」
「赤い赤い!」
「もういい!!!トイレ行ってくる!!!!!!」
私は落ち着かせるために教室を出てトイレに向かう。
なんだか、足取りは軽かった。




