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第4話 栗原夏樹

 6時間目の数学が終わり、みんなが急いで帰り支度をする中、私はノートとにらめっこをし、ぶつぶつ独り言。

「うーん……この問題…わからないな…このままにするのもめんどくさい……」


今日放課後写真部へ行ってみよう。鈴は写真部だからそこで教えてもらおう。

鈴の席に行き、鞄に荷物を積める鈴に話しかける。


「鈴?今日写真部行っていい?わからないところあって放課後教えてほしい。」


「あぁ。構わない。リン……。君は本当にめんどくさがり屋なのか?時折見せるそのやる気は何なのだろうか。」


「別に……めんどくさいけど…わからなかったらもっとめんどくさいから。」


「そうか……果たしてそれは……まぁいい。好きな時に部室へ来てくれ。」


「はぁい。」


HRも終わり、ひなたから最近できたカフェに行こうと根気強く誘われたが、物事の優先順位を付けたところひなたからの誘いは最下位であると判断し、写真部へ赴いた。


「えっと…ココが写真部か……」

校舎の4階。廊下の一番端のほうにある小さな部屋。教室と教室の間にある倉庫のような場所。


私はガラガラっと引き戸を開けた。

「こんにちは~鈴いますか~?」


そこには鈴の姿はなく、写真部の部室は真ん中に大きな長机。それを囲うよにパイプ椅子が並べられ、壁にはホワイトボードがあり、会議室のような感じだった。そしてパイプ椅子に座りカメラの手入れをしている一人の男子と目が合った。急な訪問に驚いている様子だ。


「楪さん……?あ、あの……」


「私の名前知ってるの?知り合い……」

彼は私の名前を知っているので私は必死に自分の記憶を巡らせた。


「あ!同じクラスの栗原か。写真部だったんだな。」


私が思い出すと彼はどこか表情が明るくなった。


「あ、えっと…そうです。栗原夏樹(くりはらなつき)です……。」


「よろしく。鈴のこと知らない?勉強教えてもらいたくってさ。」


「は、早坂さんですか。早坂さんでしたら急に委員会の仕事で呼び出されたとかなんだとか……待っていれば来ると思いますよ!」


急用か。仕方がない。ここで帰るのもなんだし先延ばしにしたくない。


「そうか…じゃあここで待ってもいいかな?」

栗原の向かいの席に座り、聞く。

あまり目が合わないのはなんでだろう。彼はカメラに視線をやりながら答えてくれた。


「は、はい、是非!」


私は教科書とノートを机に置き鈴を待つことにした。

栗原とは同じクラスだが全くと言っていいほど接点がない。鈴が来るまで暇だ。会話の内容も浮かばないしめんどくさい。でも無視して寝るのもなにか人としておかしい気がする。

何を話そうかと悩んでいた時、チラチラとみられる視線を感じた。


「何をチラチラそんなにみてるの?」


少し強い口調に聞こえてしまったせいか彼は肩をびくっと震わせた。


「いや!すみません!何を話そうかなと思いまして……はは。」


少しだけ口元が緩む

「別に。見られて困るもんじゃないけど。私も同じこと考えてた。」


彼は目を少し見開いた。必死に頭を回転させているのが目に見えてわかる。

「しゃ、写真部来るの初めてですよね?」


「そうだね。なんか無機質な感じの部屋だね。」


「確かに何もありませんね。カメラがあればどこでもいいですからね。」


「さっきまで何してたの?」


「カメラの手入れと…去年の文化祭の写真の整理をしてました。」


私は立ち上がり、栗原の隣に座り、カメラの画面を覗く。

「へぇ…さすが写真部。うまいんだね。」


彼のカメラには屋上から撮った夕焼けの写真が写っていた。

太陽が全部写りきらず半分だけ見えてるのが逆にいい。


「えっと!あ、ありがとうございますっ!」

(り、楪さんが近い……心臓の音……聞こえちゃわないかな……顔が熱い……どうしよう)

「えっと…今度楪さんが夕日に照らされたところも撮ってみたいです!」


「……え?」

私は顔を上げて彼の顔を見る。


「あ、いや、!ごめんなさい!変なこと言いました!」


「別に。変じゃないよ。写真撮る人がそう思うのは案外普通なんじゃない?」


「そ、そうですか……楪さんがそう言ってくれるならうれしいです……。」


「なにそれ。」


なんだかおかしな人だなと思い笑みがこぼれる。



顔を赤らめる夏樹。そして珍しく笑うリン。二人の間に暖かい空気が流れていた。



ガラガラ……


部室の扉が開く音がした。そこには鈴の姿が。


「すまない。待たせてしまった。ん?」


鈴は二人で写真を見ている光景を見て何か察した顔をし、ニヤける。


「そうか。お邪魔したみたいね。リン。」


「鈴…別に。待ってただけよ。」


「あらそう?でも待ってる間退屈しなかったみたいね?」

鈴は口角を上げ、くすっと笑う。


「……なんか妙なこと考えてそうだけど…ただ写真見せてもらってただけだから。」


「ふふふ。そんなムッとしないでいいじゃない。栗原君も、リンに構ってもらってよかったわね。」


「え!い、いやその……はい……。」


「冗談よ。ごめんなさいね。」

鈴は楽しそうに私たち二人をからかった。

私は栗原の向かいの席に戻り、数学の教科書を開いた。


「それでさ鈴。ここの単元教えてくれない?」


「もちろん。でも……それなら栗原君に教えてもらったら?」

鈴は笑顔で栗原の方を向く。

想像もしていなかった栗原は驚いた様子で鈴を見つめる。


「え!僕が!?」


「そうよ?リンは知らないかもだけど、栗原君結構賢いのよ?数学なら時々私でも点数負けるわ。」


鈴と同じくらいの学力を栗原が持っていることに驚く。

「え、まじ?そうなの?栗原。」


「ま、まぁ勉強はそれほど……嫌いじゃないといいますか……」


「じゃあ…教えてよ。鈴より教え方うまいかもしれない。」


「え!あ、あの是非!喜んで!!!」


鈴は私たちを見て微笑む。

「ふふ。いい感じじゃない。」


「ん?何が?」


「なんでもないわ。さ、勉強よ。」



こうして、リンと夏樹の距離が、少しだけ縮まった放課後だった。

夏樹の心臓は、まだバクバクと鳴り続けていた——。



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