第3話 勉強会(仮)
いつものように教室の席で窓を見ていたら、泣き顔のひなたがこちらに歩み、私の席の前に立った。
「リンさん……勉強を……教えてください…」
「へぇ〜…確認できた感じ?」
私はからかうようにニヤけて返した。
「そうだっ!!私ん家で今日勉強会するよ!いいね?リン!」
気合いの入った声で目を大きく開け、拳を握りしめ私達に告げる。
スマホをいじる手を止めてひなたを見る。
「ひなたが勉強会ねぇ…好きな奴でもできたの?」
「な、な、なんでそうなるのよっ!追試のためだってっ!」
「そう?ただ女子会したいだけじゃなくて?」
「ぐっ…ま、まぁ…?恋バナしたい訳じゃ無いし?」
ひなたは両手の人差し指を合わせモジモジしながら話す。目が泳ぎすぎだ。
少し間をおいてため息をつきながら
「はぁ…図星か。めんどくさいから却下。」
却下するとひなたは
「ちょちょっとっ…!勉強だってちゃんとやるからぁ~!」
「美桜とか鈴だって誘うし!ほら!美桜もテストやばそうだったし、鈴がいたら勉強になると思わない?ね?ね?」
これでどうだ、という顔でのぞき込んでくる。一考した後。
「鈴がいれば私も勉強になるか…」
「まぁいいや、美桜と鈴には伝えとくよ。」
「やった!!リン大好き!じゃあ今日午前授業だし〜、学校終わり私ん家ねー!」
授業が終わり4人で一緒にひなたの家へ。
「いらっしゃーい!ほらほら適当に座って~」
部屋は真ん中に四人でちょうどいいサイズの長方形の机があり、横にははベッド、部屋に入って右奥には使われてなさそうな勉強机。左には少女漫画が並べられた本棚。いかにも女子っぽい。
みんなで机を囲み、勉強を開始してから30分ほど経過したとき。案の定ひなたが騒ぎ出した。
「あぁぁぁ…鈴ぅ…この問題ちっともわからないよぅ…」
鈴は解いていた参考書から目を離し、ひなたのノートを見る。
「どれ。あぁ…これは公式を覚えてなきゃ難しいわよ。ほら、一緒に覚えましょう?」
「鈴マジ天使ぃ…」
少しあきれた表情で私はひなたをチラ見し、特にやることもなかったから確認テストで間違えた問題に取り組む。
すると横からふわふわしたオーラと共に、どこかくらいオーラも感じた。ぞわっとして恐る恐る横を見ると、そこには今までに見たことのないような鋭い眼光にくわえ、この先の未来すべてに不安を抱えているような美桜がいた。
「追試…私は一生追試に追われるんだ…華やかだったJK生活もここまで…もう一生追試…留年…卒業できずに…みんなは幸せになって私は…」
止まらない絶望。さすがにほっとけなくて私は声をかける。
「あ、あの美桜?いったん基礎だけでも解けたら追試は…ないから…ほら…ココ惜しいよ?」
「リンぢゃぁぁぁん…あ’’りがどぉぉぉぉ…」
そういって私に抱き着く。力が強い。胸がだんだん湿っていく。
「あ、あぁ…あの泣きすぎだな…」
そうして勉強を開始してから3時間程度経過した。私はわからない問題をわからないままにするのはめんどくさいから、たまに鈴に教えてもらった。まぁほとんど美桜のお世話で終わったけど。
ひなたも鈴に教えてもらって何とか赤点は回避できそうだ。
外も夕焼けでオレンジがかったころ。一区切り終えたひなたがドンッ!とペンを置きこぶしを握り少し上を向いた。
「よぉーし!リン!鈴!ありが……あぁっと美桜!ありがとう!!もう大丈夫!ここからは……休憩がてら、女子会だよ!!!!!!!やるよ!リン!」
一瞬美桜を忘れていたような気もする。まぁお世話にはなってないか。
「どうせひなたにとってはこれがメインでしょ?」
「まぁまぁ!それは置いといて~」
いかにも上機嫌なひなたは頭の周りに音符が見えるほどにんまりして私たちを見る。
「ねぇねぇ3人はさぁ~好きな人とかいないのぉ~?」
恋バナというのに参加してこなかった私は自分には関係ない話だと感じ、再び問題集に目をやろうとした。
「ちょっとリン!逃がさないよ!?」
ひなたがのぞき込んでくる。
「なんだよ……近いって……。」
「まずはリンからだね!気になる子とかいないの?」
「別にいないし……興味もないって。」
「えぇ~…リンってばモテるのにもったいないって!ね?美桜?」
美桜はこれでもかと大きく首を縦に振る。
「うんうん!リンちゃんすっごく可愛いから男子からの人気もすごいと思うよ!」
私が恋愛か……。これ以上聞かれるのもめんどくさいし、ネタもない。適当にひなたにしゃべらせよう。
「ていうか、あんたこそどうなのよ。彼氏とかいないの?」
一瞬固まって、顔が赤くなる
「わ、私?!い、いないよ!今は勉強に集中してるし!」
全員が一斉に無言でひなたを見つめる
「な、なにその目〜!」
美桜は首をかしげて
「でもひなたちゃん、この前、隣のクラスの男子と楽しそうに話してませんでした?」
ひなたはさらに赤くなる
「あ、あれはただのクラスの用事で!」
鈴はクスッと笑いながら
「必死ね」
私も少しあきれ、少しニヤけながら
「……めんどくさい奴」
「もう!リンに言われたくない!」
美桜は私の腕に抱きつき、甘えてくる。
「でもリンちゃん、笑ってる〜。かわいいです」
美桜を軽く小突きながら
「……お前は黙ってろ」
こうして4人の勉強会(仮)は幕を閉じた。
後日、ひなたと美桜は赤点すれすれで追試を突破したようだ。
四人の楽しげな声が、ひなたの部屋に響く。
恋バナに花を咲かせたいひなた、無自覚にリンを照れさせる美桜、クールに見守る鈴、そして少し呆れながらも確かに楽しんでいるリン。
今日も、彼女たちの他愛もない日常は続いていく——。
次回はリンに片思いをする男子が登場です!!




