7話 長野駅
本来なら、十時五十分に長野駅に到着する予定だった。けれど、飯山線の最高速度に合わせて、しかも各駅停車で走った結果、十一時半に到着することになった。四十分の遅れだ。あの⬛︎⬛︎パイロットめ...!
『過去の事に怒っても、意味はありませんよ』
「ミズハ...」
その言葉で一気に頭が冷えた。
そうだよ、過去に囚われちゃダメだ。
長野駅といえば、改築前は仏閣型の駅舎をしていた。しかし1996年に役目を終えた。理由は1998年の『長野オリンピック』の開催と『長野新幹線』の開業によるものだ。
(ちなみに、現在は『北陸新幹線』である)
「生まれてないから『そうだった』の話だけどね」
『老朽化という面もあるのでは?昭和11年に建てられたはずです』
そうか、それもあるかもしれない。
長野駅に停車中、加賀谷は乗客から『とある報告』を受けていた。
「これは...」
トイレ横のドア上部には、開閉装置を覆うカバーがあるのだが、そのカバーが開いていた。
隙間からは開閉装置が見えていた。
僕は急に加賀谷に呼び出された。
「どうしたの...ああ、なるほどね」
ドアには加賀谷だけでなく長野駅員たちもいた。理由はカバーが開いていたからだ。
加賀谷はペンライトを持ち、隙間の中を照らしていた。
「それで、どんな感じ?」
「一応、異常は見つかっていません。先ほど開閉をしてみましたが、問題なく作動しました」
「誰かが力をかけちゃったのかな」
「そうでしょうね...」
加賀谷はカバーを元に戻した。
僕としては二回目の事案だった。前にも、七尾線の車両でこんなことがあった。しかも、場所は同じ。
「偶然だよね...」
『警告は出ていません』
ミズハにもこの事を伝えて、521の確認をするように言った。
「それなら良かった」
『問題なく走れますね』
一時はどうなるかと思ったよ...。
『ところで、あれは115系ですか?』
ホームの端に、一台の電車が停まっていた。見たところ三両編成だ。
「あのオレンジ色と緑色の電車...115系だね。ファッ!?」
あれ?しなの鉄道って『SR1系』という車両に置き換えられていったはず...。
『唯一の115系なのですか?』
「う〜ん、僕にもよく分からないよ。それにしても懐かしいなぁ...」
子供の頃、おもちゃの115系を持っていたことがあった。
そこには覗き込む部分があり、その中から115系の写真を見ることができた。
電池を入れて自走するタイプではなかった。ハンバーガー屋で配られてたからね。
『1963年から運用が開始されているので、すでに半世紀以上経っていますね』
「そんなものが走っていたってことだよね?」
『そうですね。時間の流れとは早いものですね』
なんかミズハがおじさんみたいなことを言い始めた。
『まもなく発車時間ですよ』
「おっと、忘れるところだった」
次は大宮駅。およそ160キロで一時間半の旅路だ。
「さぁて、行きますか」
そうか、大宮駅の次は東京駅、つまりは終点。もう終わってしまうんだ。




