5話 長岡駅
冬になるとつくづく思うのだが、なぜテレビなどのメディアは豪雪地帯ばかりを取材するのだろうか?今いる新潟県でいえば、越後湯沢や魚沼がそうだ。この辺りはスキー場があるほどの豪雪地帯だから当たり前では?
などと考えていてもしょうがない。現在の季節は春。雪は残っていない。
『冬になると、このように運行できなくなるのですか?』
と、ミズハは質問してきた。
「う~ん、僕たち人間が運転しているときにホワイトアウトなんて起きたら大変だけど、AIの自動運転での事例がないから何とも言えないね」
『それもそうですね。私もこの春が初運転ですから』
実際、自動運転の最中にホワイトアウトが起きる事例は発生していない。自動運転なんて、だいたい首都圏のような雪が滅多に降らない、そして積もらない地域でしか運行していないからだ。
まあ、それらはミズハと同じように実験中だけど。
「冬になったら、金石区長は何か細工を施す…かな?」
『私も、機器の限界を試してみたくて仕方がありません』
「機器って…例えば?」
『はい。GPS発信機やモーターです』
GPS発信機を心配するのは分かるけど、モーターは別にいいんじゃないかな?
「あのさ、ミズハ。モーターは心配しなくて大丈夫だと思うよ。『521のモーターが壊れた』なんてニュース、耳にしたことないよ?」
『それは地上だったからでしょう?私が心配しているのは空を飛ぶ場合です』
「…そっか、それも事例ないもんなあ」
なぜなら、電車が空を飛ぶことなんて昔はなかったからだ。
『長野駅へ向かう途中に、雨雲の塊がありますね』
発車五分前、ミズハからこれからの天気を教えられた。
「その雨雲って、大きさはどれくらい?」
『………長さは約50キロ、幅は約20キロの予想です。しかし、雨脚は激しくないので迂回する必要はなさそうです』
「なら心配する必要はなさそうだね」
コンコンコン…
水素の補充が終わったようで、作業員が運転台のほうへやってきた。
「補充終わりました。雲行きが怪しくなってきたので、注意してくださいね」
「了解です。ミズハにも言われてますんで」
車内に、一際目立つ服装の少女がいた。黄色のレインコートと、同色のブーツを履いていたのだ。
中へ乗り込んでくると、何かを感じたように僕の背中を見ていた。いや、これは…。
「ミズハが見られている…?」
『そのようですね。目線がHUDの文字を追っています』
「何で…」
『私にも分かりません』
その少女の目は熱を帯びている。よっぽど『ミズハ』に興味があるのかもしれない。
そんな少女も含め、乗客を乗せた521は長岡駅を発車した。




