27話 98は人を選ぶ……かも
やっぱり日本って地球温暖化の影響を受けてるなあ。まだ六月末なのに、猛暑日が多くてウンザリ……。
「全く、これだから夏は……」
でも僕は夏は嫌いになれない。なぜって、Orangestarさんの楽曲が一番輝く季節だからっ!
今日の空はまさに『快晴』。梅雨なんてとっくに明けている。おまけに雨が全然降らないくせに湿度が高い。
「こんな汗だくの顔、見せられるわけないじゃないですか!メイクは落ちるし、汗臭くなるし……!」
と加賀谷は言っていたから、夏が終わるまでは口を聞いてくれないんだろうな……。
さて、今は午前九時半。少し前まで僕は8時16分津幡発の521(四両編成)を運転していた。車内はしっかりと冷房が効いていたので涼しかった。
でも金沢駅で運転室から降りてしまえば湿気が纏わりついてくる。何とかならないかねぇ……。
「お疲れ様です」
「ま、待った翫くん!」
事務室に入ると、出合頭に金石区長が引き留めてきた。
「これからのシフトは!?」
「午前中はないですけど……?」
「なら十時丁度の小松行き、運転してくれ!」
「はぁっ!?」
今から三十分後じゃないか。あまりにも急すぎる。
でも僕は一瞬でやる気スイッチが入った……ような気がした。
「それの運転士が熱中症で倒れて……」
「やります。その521の製造番号はいくつで?」
「えっと確か……」
金沢駅の三番線。僕は運転する521の横に立った。
『クモハ521-98』『クハ520-98』
「なんとなく、そんな気がしたんだよ」
やる気スイッチが入ったのは、そういえば今日から521-98が普通に運用され始める日だな、と思い出したから。空を飛んで東京まで行った時、僕は他の個体よりも気に入ってしまった。57と同じくらいに。
「マスター、お待たせしました」
「早かったね。もう少し時間がかかると思ってた」
「マスターと一緒にいられるんですから」
六月あたりからだろうか、ミズハは僕以外の運転士についていくようになった。金石区長が言ったわけでもなく自分から。どういう風の吹き回しだろうか。
評価は高く、時々僕に嫉妬の目が向けられるくらいだ。
「懐かしいですね。あれからもう三か月も前ですか……」
「金石区長に言われたんだけど、反重力装置は積まれたままなんだって。でも使えないらしいから」
つまりは封印だ。……あれ、重量増えてる?
熱線入ガラス、オフ
運転士側ヒータ、オフ
助士側ヒータ、オフ
EL計器盤、オフ
時刻表灯、オン
標識灯、滅
乗務員室灯、オン
ワンマン基盤、オフ
ブレーキの圧力も問題なし。制御系の異常もなし。発車準備完了。
『まもなく十時ちょうど発、普通電車小松行きが発車します。閉まるドアにご注意ください』
駆け込んでくる乗客がいないことをミズハが確認し、ダイヤ通りに発車した。
『ゲリラ豪雨の確率が上がっているので注意しましょう』
「了解」
無線越しにミズハから伝えられた。
223系、225系の外観、車内設備、運転席、台車……
683系の主電動機、車両制御装置、ブレーキ装置など走るための機器類……
321系の車体構造、空調装置……
125系のワンマン運転用機器……
ものすごい『キメラ』ですね。




