25話 生きた証
ミズハを家に迎え入れた翌日、言っていた通り墓参りへ向かった。
「山ですね」
「おじいちゃんたちの家よりも山でしょ?」
アクセルをいつもより踏んで峠道を走っていた。
角度が40°くらいはあるんじゃないかと思うような坂もあるのだが、一番の驚きはここに学校があることだ。
...時間が合わないからか、生徒の姿は見当たらないけど。もしかして廃校だったりして?
「ここだよ」
ようやく目的地の『墓地公園』に着いた。
「来たよ、ワタナベのおじいちゃん」
墓の近くにカローラスポーツを停めた。
墓石に埃はついているものの、遠目からはきれいに見える。
「ミズハ、もう片方の花立持ってくれる?」
「分かりました」
最後に来たのは去年だったので、花束はすっかり枯れていた。
「ワタナベのお祖父様はどんな方だったのですか?」
「う〜ん、そんなに覚えていないんだよね…」
顔は覚えているけど、声はうろ覚えだ。そもそも遠くに住んでいたから、会いに行く頻度が少なかった。だからただ単に『おじいちゃんおばあちゃん』と言えば、よく会っていた『翫の』おじいちゃんおばあちゃんになる。
亡くなったのは僕が小学生の頃だった。葬式場でワタナベのおばあちゃんが泣いていたのを覚えている。
思い出といえば、フィット(赤色のGE8型)に乗って出かけるワタナベのおじいちゃんを見送ったくらいだ。
「ワタナベのおじいちゃん、僕さ、空を飛んだんだよ。生身じゃなくて電車でだけど。トラブルはあったけど、思いの外楽しかったよ」
僕は風で消えないようにろうそくと線香に火をつけた。
「それと...高校生のときに悩みを聞いてくれてありがとう」
「マスター...」
「よし、帰ろうか」
帰路で信号待ちをしているとき、ふと見たくなったものがあった。
「家に帰る前に行きたいところがあるんだけどいい?」
「私はどこへでもついていきますよ。それで、見たいものとは?」
「D51 522」
『デゴイチ』とも呼ばれている蒸気機関車だ。『498』や『200』が有名である。近くの公園でポツンと置かれていて、小さい頃からそれを見に行くのが好きだった。今はその公園は改修工事が行われていて、白山に移動されている。
実家から少し離れていて、よく小学校の遠足で行ったりしたっけ…。
「デゴイチですか。私も見てみたいです」
「なら、早速行こうか」
僕らはトレインパーク白山へ向かった。
「ない...!」
「本当に、ここにあったんですか...?」
目の前の光景を見て僕は絶句していた。
デゴイチがあった場所には、赤色の415系が置かれていた。七尾線で使われていた車両である。
「おかしい。少なくとも去年はあったのに」
「また別の所に移動されたのでは?」
「いや、そんなことしたらニュースで大々的に報道されるはず」
デゴイチは120 tもあるから、重機とかを使って移動する...と思う。それなら誰か目撃者がいるはず。なのにそのような声は上がっていない。
「どこへ行ったのでしょう?」
「職員は......見当たらないね。区長とか知ってないかなぁ...」
そう思って電話をかけてみたが繋がらなかった。きっと忙しいんだろう。
「...無いのなら仕方ないか。帰ろう」
「了解です」
復活...…はさすがにないか。そもそもレールが耐えられないだろうし。
その日の夜、自室で北陸本線のレール強度を調べてみた。
その結果、デゴイチの重さに耐えられることが分かった。
あれ、もしかして復活説濃厚...…?
「いやいやいや...…考えすぎだよねぇ」
明日は普通に仕事なのですぐに布団へ潜った。
寝る前の『ナイト・オブ・ナイツ(USAO Remix)』最高。ハードコア楽しい!




