24話 マイホーム
「ここが、マスターの家......」
「正確には『祖父母の』家だけどね」
車を走らせること十五分。ミズハは目の前の家を見て言葉を漏らしていた。
先ほど言った通り、ここは祖父母の家だ。『職場に近いから』という理由で住まわせてもらってる。
「ただいま〜」
「おかえりなさい、かなで君」
台所からおばあちゃんの声がした。
「おばあちゃん、おじいちゃんは今どこ?」
「山に登ってるの」
「ほんと、元気だなあ」
衰えを知らないんだろうな。
子供の頃から『おじいちゃん』『おばあちゃん』呼びなので、今もそう呼んでいる。
「あら、その子は?」
おばあちゃんが僕の後ろに立っているミズハに気がついた。
「実は...」
「彼女さん?」
「違うよ!?」
「ならお嫁さん?」
「それも違うっ!」
先にミズハのことをおばあちゃんに説明した。
「ほぉ〜、アンドロイドねぇ」
「おばさまは無理をなさらず、私に家事を任せてください」
ミズハはおばあちゃんのことを『おばさま』と呼ぶようになった。だとしたら、おじいちゃんは『おじさま』と呼ぶだろう。
「それで、かなで君。家を案内しなくていいの?」
「職場にいた時からしようと思ってた」
まずは玄関。その右側にトイレ。右斜め前に階段。かなり急な角度なので気をつけるように言った。この階段、前までは手すりがなかったがリフォームの時につけてもらった。リフォーム前はけっこうヤバかった。昔の家あるあるだ。
階段を登ると部屋が二つあり、左がおじいちゃん、おばあちゃんの部屋。右が僕の部屋になっている。
一階に降りて、階段の横を通ると台所に繋がり、左に曲がれば居間がある。居間は和室とサンルームに挟まれるようにあり、和室の襖を開ければ階段や玄関があるスペースに繋がる。
台所の横には洗面所、そしてそこを通ると風呂場がある。
洗面所の扉の横には裏口の扉があり、車の車庫に繋がっている。今はおじいちゃんが車を使っているので空いている。
カローラスポーツの横幅だと、ここには入らない。それくらい狭い。
ざっとこんなものかな。
説明をし終えた頃、おじいちゃんが帰ってきた。
「ただいま〜」
「「おかえり〜」」
おじいちゃんは居間に入ってくると...。
「お?彼女か?」
「違う違う」
「ならお嫁さんか?」
「それも違うって...」
やっぱりおじいちゃんおばあちゃんは夫婦なんだな、と感じた。
「改めまして、ミズハです。これからよろしくお願いします」
夕食を食べ始める前に、改めてミズハを紹介した。
「今のロボットはすごいなぁ。俺らの頃のロボットと言えば『マジンガーZ』とか『ゲッターロボ』だったぞ」
「サイズがそもそも違うって」
おじいちゃんがミズハを見て目を丸くしていた。
「それでさ、ミズハをどこで寝かせようかなって...」
「マスターの隣ではいけませんか?」
「...狭いよ?」
僕が使わせてもらっている部屋には大きなタンスがあり、部屋の四分の一を占めている。さらに僕の机もある。そんな場所で二人が寝られるわけない。
「そこの和室使ったらどうだ?」
おじいちゃんは隣の和室を指差した。確かに、従兄弟の家族が全員寝られるスペースがある。
「...なら、大事に使わせていただきます」
これで、ミズハの過ごす場所は確保できた。
「マスター、明日はどうしますか?」
僕が寝ようとしたところ、ミズハが尋ねてきた。
そういえば、明日は仕事が休みだ。
「...お墓の様子を見てこようかな」
ここから三十分くらい車を走らせたところに、『ワタナベの』おじいちゃんの墓がある(『ワタナベ』はお父さんの旧姓だ)。
先ほど話していたのは『お母さんの』、つまりは『翫の』おじいちゃん、おばあちゃんである。
「私は同行してもよいのでしょうか?」
「ん?もちろんいいけど」
さすがに一人で掃除をするのは骨が折れるし、あそこは山だから熊とか蛇が出やすい。
「ミズハがいれば安心して作業できそう」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
言葉通り、ミズハは本当に嬉しそうだった。
『681系ではハイジャック犯を制圧したじゃないか』って?
あれはほら、夢だから。僕のようで僕じゃないから。




