21話 数学や化学は好きですが、体育がどうもダメで嫌いです。
【テスト終了のお知らせ】
戻ってきました!ここ一週間、小説に触れられなくておぎゃりそうになりました。
テストも終わって余裕ができてきたので、これから物語を描いていこうと思います。
ちなみに、メインストーリーの終点まであと少しです。
本来なら、僕はマスコンから手を離せないはずなのに...今は普通に手を離して立っていた。
「でしょう?」
運転席ではミズハがドヤ顔を決めていた。
『後は私が操縦するので、マスターは休んでください』
『え、でも手を離したらデッドマン装置が...』
『私が数秒間ダウンさせるので問題ありません。その間に交代すればいいのですから』
『考えることがえげつないって...!』
というわけで、僕はミズハに運転室から追い出されてしまった。運転士って何だっけ。
ちなみに『デッドマン装置』というのは、操作者(この場合は運転士)が意識を失うなどをして操作器から手や足を離した際に、機械やシステムが自動的に停止または安全な状態へ移行するための安全装置のことだ。
他にも、この521には『EB装置』というのもあり、これはデッドマン装置を補完する保安装置だ。
...こんなことを考えていても、たった数分しか経っていない。ゲームをしている時みたいに早く流れていってほしい。
『うなされて疲れているでしょうから、マスターは寝ていてください』
「あっはい…」
車内アナウンスを使ってミズハが促してきた。『大人しく寝ていて』と…。
まあ、疲れているかと言われたら疲れている。あの夢によるものかは分からないけど。
というわけで、簡易シートを出して横になった。他のシートは荷物で埋まっているからね。
僕は体育が嫌いだった。元からインドア派で、家の中でゲームをする方が楽しかった。
筋力も女子並み……もしかしたらそれ以下かもしれない。それくらい筋力がなかった。ついでに言えば、体力もなかった。
個人で行う種目、例えば『100 m走』や『ハンドボール投げ』といった、体力テストの種目なら気兼ねなく(一人ぼっちで)していた。
でも、チームで行う種目だとそうはいかなかった。
高校時代の僕は、クラスのどのグループにも入れていなかった。『体力がある陽キャ』でも、『共通の趣味を持つ隠キャ』でもなかったからだ。
そんなある日、英語の授業で『体力がある陽キャグループ』の一人と共同で発表することがあった。それがきっかけで彼らに持ち上げられるようになった。
僕はずっと愛想笑いで乗り切っていたが、心の中では辛く、苦しく感じていた。
そしてそんな彼らとチームメイトになってしまうと…。
「翫くんがいるから勝ったな!」
と言われた。どこから湧いてくるんですかねその自信は。
バレーボールでサーブを入れられなかったとき。
「惜しい惜しい!」
僕のパワーじゃ入らないことを知っているのに。
ボールを取り損ねたとき。
「ごめん!俺が悪かったな」
僕が上手く反応できなかったことを知っているのに。
バスケットボールでパスを回したとき。
「上手いじゃん!」
僕が持っていたら簡単に持っていかれるのでパスを回しただけなのに。
ゴールが決められなかったとき。
「大丈夫、次入るから!」
彼らの方が決める確率が高いのに。
結局、僕はずっと彼らに気を使わせてばかりいた。それが一番辛かった。
ゲームに勝てた日は『チームメイトのおかげ』、負けた日は『僕がいたから』。いつの間にかそう考えるようになっていた。
じゃあ、ネガティブな自分を励ましてくれたのは?
だいたいは『キノシタ』さんだ。僕のクラスメイトではなく、ボカロPの方だ。
授業後や放課後には、しょっちゅう『ポジティブ☆ダンスタイム』や『エライエライエライ!』を聴いていた。本当にポジティブになれるのだから、キノシタさんはすごいと思う。
「翫さん、突き指してない?」
体育の授業が終わった後の昼休み、豊沢さんに話しかけられた。
「突き指はしてないけど…」
僕は手の甲を見せた。ゲームの最中に接触して切り傷ができていた。
「だ、大丈夫なの!?」
「平気平気。これくらいならティッシュで押さえてたら止まるし…」
ゲーム中、僕に本気で向かってこないでほしい。こっちは初心者なんだから。
「はい、絆創膏」
豊沢さんは筆箱の中から絆創膏を取り出した。表面には魔法少女系のキャラクターがプリントされていた。
「これを貼るのは恥ずかしいけど......無いよりはマシかな。ありがとう」
「待って、私が貼ってあげるから」
手際よく紙を剥がし、僕の手の甲に貼ってくれた。
…僕は豊沢さんにも気を使わせてばかりだなぁ。
「ケガで休んでもらっちゃ困るから」
「……ありがとね」
豊沢さんにお礼を言ってから席を立った。
今思えば、『ピノキオピー』さんの『魔法少女とチョコレゐト』をよく聴いているから、そんなに恥ずかしくないな。




