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20話 診断結果

「おはようございます」

「翫とミズハ、そして加賀谷で〜す」

 僕たち三人は、521を預けた車両所に向かった。金石区長は『整備工場みたいな建物に来てくれ』と言われたので、それっぽい場所に行ってみた。

「案外早かったな!」

 建物の中から金石区長が現れた。良かった、ここで合ってた。

「さて、肝心の反重力装置だが...」

 521の前まで辿り着くと、金石区長が話を切り出した。

「あと一回しか使えない」

「「......」」

「私は自己診断をした際に薄々感じていました」

 マジですかぁ...。というか、ミズハは気づいてたのなら言ってくれればよかったのに。

「想定以上の負荷でな...回路がショート寸前だったんだ」

「それで、直したんですか?」

 金石区長は首を横に振った。

「パーツが足りなくてな、完全に直ったとは言えない。だから『あと一回』って言ったんだ」

 この521の航続距離はだいたい200 km、豆知識系のクイズ番組によれば、石川県と東京都の直線距離はだいたい300 km。どう考えても水素が足りない。

「航続距離については心配しなくていい!」

 まるで心を読んだように金石区長が言った。

 手招きされて『クモハ521』の車内に入ると、優先座席があるはずの場所に、円筒のタンクがあった。

「燃料タンクを追加しておいた。これで350 kmは走れるぞ!」

 とんでもない荒技だ。乗せられる乗客数が減ってしまったでしょ。

 それにしても。僕は車内に入った時から気になっていたことを尋ねた。

「この箱って何ですか?」

 全てのシートで、段ボール箱がロープでがっちり固定されていた。しかも、シートの足元スペースにもぎっしり置かれていた。

「今日は乗客じゃなくて『荷物』を運んでもらう」

 東京駅から金沢駅を直通で走るので、乗車する乗客が見込めないかららしい。

 そこで、整備員の一人がこの案を出したのだとか。

「この二日間でこれだけの荷物が集まるとはな!」

『クハ520』の方も段ボール箱で埋まっていた。一応、僕たちの歩けるスペースは確保されている。

「出発は今日の九時。東京駅の八番線から飛び立つ予定だ」

「あと一時間もありますけど?」

「チェックしてたらあっという間だろ?」

 それはそうだけど。


 荷物の固定チェックは加賀谷とミズハに任せて、僕はライトチェックに入った。

 521の前照灯とフォグランプはHID式なので、点灯直後は暗い。けれど、それは時間が経てば解消される。

「光量は...問題なし」

 次に種別・行先表示。これは57と同じようにLED式になっている。

 それより前の製造番号(56まで)は、種別がクルクル回るヤツだ。今はもう走っていない『新快速』の表示がチラッと見えることがある。

「こっちも不具合なし」

 反対側もチェックを済ませ、運転室へ入った。


「どう?順調?」

 運転室のチェックを済ませ、車内で荷物のチェックをしている二人に声をかけた。

「順調です、マスター」

「見たところ、祖父母宛ての手紙や贈り物が多いですねぇ」

「春だからじゃない?今って入学シーズンだし」

「あ、そうでした」

 思えば、僕や加賀谷がここに入社したのも三年前の今頃だった。

「翫さん!向こうに着いたら犀川で桜を見に行きましょう!」

「急だなぁ...まあいいけど」

「ミズハも一緒に行こうよ!」

「...分かりました。マスターが行くのなら、私も同行しましょう」

「やった〜!」

 これ、フラグとしか思えないのは僕だけ?



『まもなく、八番線を回送列車が通過します』

 午前九時前の東京駅にアナウンスが響いた。

 ホームにいた人々は首を傾げていたが、一部はその回送電車に期待を寄せていた。

「来たっ!」

 声が上がった瞬間、520が通過していった。

 そして遠くで飛び上がった。

「安全にな〜!」

「じいちゃんによろしく〜!」

「かっこかわいい!」

 520には、たくさんのファンが誇らしげに見えた。


 とある鉄道ファンがネットで呟いた。

『空で走っていて、空で想いを乗せていて、空で警笛を奏でる。三つの[くうそう]を持ってるよ。あの521は』

 そこから、愛称の候補として三つが挙がった。

『空走列車』

『空想列車』

『空奏列車』

 圧倒的に投票が多かったのは『空奏列車』で、一時間で一万票を獲得していた。

 ボカロ愛好家が『Orangestar』さんの楽曲と重ねていたから。


『運転士さんの名前、[かなで]って言うらしいね』

 どこから仕入れた情報なのか分からないが、そんな投稿がされた。

 その投稿が起爆剤となり、『空奏列車』の票は一気に五千票も増えた。

 そして日が沈む頃には二万票に達していた。

『決まりだな』

『そんなのもう[それにしろ]って言われてるよね?』

『偶然だよな?わざとならかなりの策士だよ』

『言うほど策士か?すごいのは認めるけど』


 こうして、521の愛称は『空奏列車』になった。このことを僕は日付が変わってから知った。

 来週の木曜日まで筆記テストがあるので、次の投稿は来週の金曜日(2月20日)の午前八時になります。

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