1話 お披露目
金沢駅の七番線に入線すると、多くの人がカメラを持って待ち構えていた。スマホや一眼レフ、デジカメ...。
「どれがメディアでどれが鉄道ファンか分からないな...」
『おそらく一眼レフを持っている人が鉄道ファンでしょう』
思わず苦笑してしまった。ミズハもカメラを通してホームの状況が見えているらしい。
そっか、一眼レフを持っているということはガチ勢ってことだもんな(偏見)。
車両が停車すると、金石区長がホームに降りた。
「長らくお待たせいたしました。本日はお集まりいただきましてありがとうございます。区長の金石です」
金石区長は淡々と言葉を紡いでいく。大勢の人の前で堂々と語れるメンタルが欲しいよ...。
その間に、僕は521の運転台へ向かう。
富山方面へ向かうのだから、運転士と車掌の位置を入れ替えないといけないのだ。
ゴミが落ちていないか確認しながら進んでいると、連結部の付近でオンの状態の加賀谷とすれ違った。
「ミスはしないでくださいね」
車庫での活発な性格は隠れ、クールで完璧主義な性格が表に現れている。
「まあ、やれるだけやってやるさ」
僕は既に腹をくくった。加賀谷もそうらしい。
東京まで走り終わるまでが僕の仕事、任せられたからにはやるっきゃない。
発車十分前。
金石区長の挨拶が終わり、ロック解除の合図が出されたので、素早くスイッチを操作してロックを解除した。
521は乗客が自分でドアを開けるタイプなのだ。まあ、発車時刻になると車掌(今回の場合は加賀谷)がドアを閉めるけど。
最近はワンマン運転で、僕ら運転士がドアを閉めることも増えてきた。
ドアが開き、子供から大人まで、様々な人が乗り込んでいく。子供は窓側の席に座り、無邪気に笑っていた。
「あなたがこの列車の運転士ですか?」
乗客には記者も含まれていて、僕を見るなり詰め寄ってきた。
「そ、そうですけど」
「今回、初めての運行を任されましたが、今の心境を!」
いつの間にか数十人の記者に囲まれていた。
「ま、まあ、僕ではなくAIの『ミズハ』が加減速を行います。業務内容は確かに減りますけど、まだ実験段階なので。とにかく、ミスがないようにしていきます」
言葉に詰まりながらも、記者たちのインタビューに答えていった。
金石区長は『コメントはしなくていい』って言っていたのに...。
列車の発車時刻になった。
『まもなく発車します。閉まるドアにご注意ください』
車内に自動音声が響いた。
ガラガラ...プシュー。
ドアが完全に閉まったのを確認して、HUDを見た。
『準備は出来ていますか?』
「もちろん」
『安全確認出来ました。発車可能です』
加賀谷から無線が届いた。この無線を合図に、ミズハがブレーキを解除した。
『三秒後に発車します』
そして三秒後、521は動き出した。
ふと駅のホームに立っていた金石区長を見ると、声を発しているかのように口が動いていた。
[頑張ってこい]
そんなことを言われたように感じた。僕もそれに応えるように口を動かした。
[行ってきます]




