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16話 医学の人

「よお轢かれかけた兄ちゃん。どこか具合が悪いとこある?どんな些細なことでもいいから言ってみ?」

 目を覚ますと、白い光を放つ蛍光灯が見えた。

「......ぽへぇ?」

「ブフッッッw」

 身体を起こすと、僕は駅構内の部屋にいることが分かった。救護室みたいな場所かな?

 左を向くと、白衣の若い男性が口元を抑えていた。

「え〜と...?」

「あ、ああ、すまんねw。その反応最高w。今まで診てきた人の中で、そんなことを言う人がいなかったからw」

 その男性は深呼吸をして落ち着こうとしていたが、思い出してしまうのか笑いが絶えなかった。

 なんか、接しやすそうだなあ。

「あ、俺『気取きとり 泰平たいへい』って名前。好きなように呼んで」

 黒色に赤色のメッシュが入った髪が特徴的だった。ただ、ボサボサで整えられていなかった。

「ど、どうも。翫かなでです」

 話を聞いていくと、僕を助けたのは彼らしい。

「君を退避スペースに放り込んで、そのまま線路から離脱したってわけ。その前から君は意識を失ってたけどね」

「あ、ありがとうございました」

「なぁに、金ならまた今度でいいって」

 すると、気取さんは立ち上がった。

「あの子たち呼んでくるね〜」

 あの子たち...ミズハと加賀谷かな?

 数分後、ドタドタと足音がしたと思ったら、勢いよくドアが開かれた。

「マスターッ!」

「翫さんっ!」

 案の定、ミズハと加賀谷だった。

 二人はそのまま飛びついてきた。抱きしめられるというよりタックルされてると言った方が正しいかな。

「マスター、マスターだ...!」

 ミズハは頭を僕の胸元に押し当てていた。まるで猫だ。

「一番好きな521の製造番号は!?」

「57」

「ちゃんと翫さんだ〜!」

 加賀谷よ、その判断の方法はどうかと思うぞ...。

「へえ、君って愛されてるんだね」

 部屋の入り口に立っていた気取さんが呟いた。

「振り回されてばかりですけどね」

「でも嬉しそうじゃん」

「まぁ...また会えて嬉しいですよ」

 僕は立ち上がって大きく背伸びをした。

「んじゃ、俺からプレゼント」

 気取さんはポーチから飴を一個取り出した。

「ほい、イチゴ味」

「...いいんですか?」

「子供たちにいつもやってることだから。俺、小児科の先生なんだよね」

 その見た目で...。

「意外でしょ?他の先生とかチームメンバーからも『ヤブ医者』だとか『裏で解体バラしてる人』とか言われてんのよ。ほんとはそんなことないのに」

「大変なんですね...」

 

 警察の事情聴取やら何やらで、気がつけば時間は既に午後四時だった。

「んじゃあ、お大事に〜」

 気取さんは手を振りながら駅を出ていった。

「なんか、不思議な人だったね」

「めっちゃ優しかったですよ!ねぇミズハ?」

「ええ。よくマスターの体調を気にしておられましたから」

「へぇ」

 ただのおせっかいだったりして?

「それはそうと、マスター」

 ミズハは僕の方に向き直った。

「まだ、諦めていなかったんですね」

「そりゃあ、特別休暇の最終日だからね」

 そう、僕たちは山手線の車内にいた。

 だってまだ秋葉原に行けてないから!

「せっかくなら秋葉原で夜ご飯も食べちゃいましょう!」

「なら、今日は僕が奢るよ。良い場面を見せられてないからね」

「「ゴチになります!」」

 だからミズハは......もういいや。

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