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15話 加賀谷≒天使

「ねぇ、あの子可愛くない?」

「地雷系ってあんな風に着こなせるんだ...」

「ゲヘナだ...!」

「何言ってんだおめえ」

 街を歩くだけで、あちこちからそんな声が上がる。

「若干恥ずかしいですね...」

 噂されている張本人のミズハは頬を赤らめていた。

「こうなったら加賀谷も服を買ったら?」

「そうですね!翫さん良いこと言いました!」

「え?」

 じ、冗談のつもりが...。


 今度は別のお店で、ミズハが加賀谷のコーディネートをすることになった。

「ではマスター、楽しみにしていてください」

 なぜか僕は店の外にいるように言われた。

「何で...?」

 考えても仕方ないので、ニュースを見始めた。

 そういえば、あの曲なんだっけ?確か...『おらぶんぶんすたあ』?

「何言ってんだろう」

 ちなみに、その単語は二人のボカロPのことだった。


「お待たせしました」

 三十分くらい経っただろうか。そんなタイミングでミズハが出てきた。

「それで、コーディネートは上手くいったの?」

「バッチグーです」

「バッチ...グー?」

「はい」

 ミズハがその言葉を使うとは思っていなかった。

「どうぞ」

「......」

 一瞬見間違えたかと思った。

「どうでしょうか?」

 金髪の天使が店から出てきた。

 彼女は本当に加賀谷なのか...?普段の性格と仕事の性格を足して半分にしたような性格になっている。

「前から天使みたいになってみたいと思っていたんですが、こんなにしっくりくるとは」

「...」

 僕はとある一点から目を離せなかった。

「天使の輪っか、あるじゃん」

 光を放つ輪が、加賀谷の頭の上で浮かんでいた。

「え、輪っかですか?ミズハは見えていますか?」

「...いえ、見えません」

「嘘ぉ...」

 加賀谷の前世は天使だったのかも?

「ミズハ、この服装、もう買っちゃったの?」

「はい。これもまた加賀谷さんの自腹です」

 この一日だけでどれだけ加賀谷の貯金が飛んでいったんだろうか。


 加賀谷は天使姿から普段の姿に戻った。それに伴って、性格も元通りになった。

「どうでしたか?惚れちゃいました?惚れちゃいそうになりました?」

「いや、別に」

「......次は確実に堕とせるコーデを選ぼう」

 うん、聞かなかったことにしておこう。

 ちなみに、ミズハは今も地雷系のままだ。

「それで、これからどうするの?」

「そうですねぇ...」

 山手線を待つついでに、加賀谷に尋ねた。

「秋葉原はどうでしょう?」

 ミズハがそう言ってきた。

「Nゲージの521系、買いに行こうかな」

「あれ、前も買ってませんでしたっけ?」

「それは『2次車』。今回は『3次車』があればいいなって」

 そのとき、ホームドアをよじ登る男がいた。男の手にはカメラがあった。

「危ないですよ!」

 声をかけても、止めるそぶりを見せなかった。

 引き摺り下ろそうと歩み寄った時、男の体が線路側に傾いた。

「ウグッ」

 そのまま男は線路に背中を打ち付けた。

ファァァッッッ!!

 すぐそこまで山手線が来ているというのに、男は動かなかった。というより、動けなかった。

「ああもう!」

 僕は線路に降り、男をホームへぶん投げた。

 こういうときだけ、勇気があるんだから...僕は。

 勢い余って今度は僕が線路に背中を打ちつけた。息が詰まりかける。

「ははっ、この世とサヨナラかぁ...」

 せめてE5系の後継機を見てからが良かったな。

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