13話 Shinkanseeenと駅弁
「おっ、E5系だ!」
僕たちはシミュレータから離れて一階に降りた。
ちなみにあの後、『マスター、私がアンドロイドのこと知っているでしょう?』と笑いながらミズハは答えた。笑顔になってくれて良かった。
「E5系も、もう運用されて十五年が経ちますね」
ミズハの言う通りだった。運用が開始されたのは2011年だ。...そんなに前から走ってたんだ。
「子供の時に見てたアニメでさ、これが1225km/hで走ってるシーンがあったんだ」
話していて懐かしくなってきた。あの頃は純粋に、『新幹線スゲー!』って気持ちでよく見てたよ。
「ああ、あのアニメですか。E7系も出てましたね」
「そうそう…え?分かるの?」
「いえ、適当に言ってみただけです」
「そうかぁ…一度でいいから、話が分かりあえる人と会ってみたいな~」
そもそも電車が好きな友人が指で数えるぐらいしかいない。
「...…本当は分かってますけどね」
「え、何?」
「何でもないです。さあ、中に入ってみましょうか」
このモックアップ車両は『10号車』なので、車内はグランクラスとなっている。
(仮称が『スーパーグリーン車』だったとか)
「あ〜...」
思わず声が上がるくらい、乗り心地が良かった。さすが、グリーン車のさらに上のクラスだ。
「シートは...本革なので、服装には注意が必要ですね」
「確か、デニムが色移りするんだったっけ?」
「そうです。しかも白色なので」
「あ、目立っちゃうね」
今日デニムで来なくてよかった。持ってないけど。
あっという間に時間は正午になった。僕とミズハは博物館内で駅弁を買い、とある休憩所へ。
「懐かしいなあ、この色使い...」
目の前にはクリーム色と赤色の塗装が施された183系が置かれていた。鉄道博物館では休憩所として活用されている。
「『あずさ』ですか...」
前に飾られている表示を見て、ミズハは呟いた。
「他の鉄道も、こうやって有効活用してもらいたいな」
中には団体客がいるようで、席の半分が埋まっていた。なので、邪魔にならないように出入り口に近い場所に座った。
「ミズハ...何それ?」
ミズハの手元には、見たことのない缶が握られていた。
「水素です」
「......へ?」
「元素記号『H』です」
試しに持ってみると、液体が入っている感覚がしなかった。本当に水素なんだな...。
「マスターはE7系の駅弁ですか」
「やっぱり石川県民だからね。地元が一番安心できるんだよ」
僕は駅弁の蓋を、ミズハは缶の蓋を開けて休憩に入った。
「あの、もしかして...」
駅弁を食べ終わった頃、一人の青年が近寄ってきた。
「521系を運転してました?」
「そ、そうですけど...?」
「や、やっぱり!本物だ!みんな、あの運転手さんだ!」
青年が団体の方に声をかけると、彼ら彼女らは目の色を変えて駆け寄ってきた。
「実は僕たち、『鉄道研究会』という名前でサークル活動してまして。昨日、521系と共に空を飛んでいたんです!」
目の前の青年はサークルのリーダーで、『岩岡』と名乗った。
「あの521系について、色々と教えてもらいたいんです!」
他のサークルメンバーも興味津々といった様子だった。でも...。
「これって言ってもいい情報なの?」
「区長からは『あまり口外しないように』と言われています」
ですよね〜。迂闊に話すわけにもいかない。
「すみません。上の方から口止めされているので何も言えません」
「...そうですよね。失礼しました」
「次の機会があったら、また乗ってみてください。運転士は僕じゃないかもしれませんが」
「そうします。そしていつか、独学で構造を解明してみせます!」
岩岡さんは堂々と宣言した。熱量をものすごく感じた。
話がまとまったところで、僕たちは183系から出た。




